【名波浩の視点】躍進エスパルス、パス回しのスピードはJ1屈指だ

  • 高須 力●撮影 photo by Takasu Tsutomu

 このように厚い攻撃を見せるエスパルスだが、守備も決して悪くない。10試合で9失点と、1試合平均失点が1点以下なのだから、十分に合格点を与えられる。このベガルタ戦や第8節のFC東京戦では退場者を出しながら、最後までしのいで勝利をモノにしているだけに、その粘りには目を見張るものがある。

 とにかく、中盤でアンカーを務める村松大輔(図⑥)と、センターバックの岩下敬輔(図③)、カルフィン・ヨン・ア・ピン(図④)の、3人のトライアングルが効いている。村松は両サイドバックが上がったスペースをきっちり穴埋めし、カルフィンも中央で安定した守備を披露。岩下もクリーンにボールを奪いながら、ヘディングの跳ね返しでは付け入る隙を与えていない。とりわけ、岩下はベガルタ戦でもほぼ完璧な守備を見せ、自分がマン・オブ・ザ・マッチを選ぶとしたら、間違いなく彼を選出した。

 こうしてみると、GK林彰洋を含めて、吉田、李、カルフィン、河井ら新戦力のがんばりが見逃せない。そういう意味では、いい補強をして、それがはまったのが、今季好調の一番の要因。なかでも、河井はサッカーをよく知っていて、ポジショニングに優れ、ボールもほとんど失わない。チーム躍進の象徴的な選手のひとりと言えるだろう。

 ただ、懸念されるのは、選手層が厚くないこと。まだ小野伸二や高原直泰らが控えているとはいえ、現状ではメンバーを固定して戦ってこそ、強さを発揮している印象がある。ゲーム内で交代した際はもちろんのこと、メンバーが代わっても同じレベルのサッカーができるかどうかが、今後のポイントになるだろう。

 あと、どのチームも同じだが、頂点を狙うために必要なのは、フィニッシュ。決めるべきところで、きっちり点がとれるかどうかだ。エスパルスとしては、得点王争いの上位に名を連ねるような選手が、ひとりでもふたりでも出てくるようになれば、さらにチームは変貌すると思う。

 ここまでホームゲームはすべて勝ち切っているだけに、この調子を維持できれば、優勝争いの「本命」になれる可能性もある。いくつかの課題をクリアすることが条件だが、それだけの力は、ある。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る