【名波浩の視点】今季初勝利を飾ったF・マリノスはこの1勝で変わるか?

  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

ヴィッセル戦で逆転勝ちし、今季初めてサポーターに笑顔で挨拶するF・マリノスイレブン。ヴィッセル戦で逆転勝ちし、今季初めてサポーターに笑顔で挨拶するF・マリノスイレブン。 横浜F・マリノスが第8節のヴィッセル神戸戦で今季初勝利を飾った。ナビスコカップを含めると公式戦11戦目の白星で、サポーターやファンもたまっていた鬱憤がやっと晴れたのではないだろうか。

 この日は、試合の入り方も非常に良かった。全体をコンパクトに保って、高い位置でボールを奪おうという、監督や選手が思い描いている守備ができていた。ゆえに、対するヴィッセルは、前線の選手は前へ行きたいのに、後方の選手が思うようにラインを上げられず、選手間の距離が広がる一方だった。その結果、うまくボールがつながらず、ストレスを感じながら戦っていて、F・マリノスはそんなヴィッセルの状況もよく把握して、優位にゲームを進めていた。

 ただ前半は、ゴールを奪うまでには至らなかった。問題は、シュートの意識が低過ぎた点にある。ここでボールを運べばいいのに、ここでシュートを打てばいいのに、というところで、ボールを横に出してしまうなど、セーフティーなプレイばかりを選択していた。

 そして後半、逆に小川慶治朗を投入したヴィッセルが前への勢いを増して先制。F・マリノスは一時劣勢を強いられた。それでも、F・マリノスも交代出場の谷口博之が入ってから再びリズムを取り戻し、小野裕二が同点ゴール。それからは完全に自分たちのイメージどおりの戦いができるようになった。サイドを変える、前にボールを入れる、時間を作るところは作る、というイメージが選手全員で共有できていた。悪い流れに陥りながらも、逆転に成功し、さらに3-1と突き放すあたりは、さすがに力を持っているな、と感じた。

 にもかかわらず、これまで苦しんでいた要因は、一番にメンタル的なものだと思う。守備で踏ん張っていても、相手に点を奪われたあと、点を取り返すだけのパワーがなかった。それは、「ああ、(今日も)またか......」という空気にチーム全体が抑えつけられていたからではないだろうか。開幕戦の柏レイソル戦こそ負けそうな試合を土壇場で追いついたけれども、その後の試合では点が取れない試合が続いた。カップ戦でも同じような状況に陥り、結果が出ないと選手たちもなかなか自信が抱けないもので、その空気は徐々に重苦しいものになっていったと思う。

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