【Jリーグ】着実な進化。
ベガルタ仙台の昨シーズンを上回る勢いの源とは

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昨シーズンと同じ4-4-2をベースに戦う仙台昨シーズンと同じ4-4-2をベースに戦う仙台 ではなぜ、ラインを高くできるのか? それは、戦力補強の成功にある。まず、セレッソ大阪から加入したセンターバックの上本大海の存在だ。

 上本はスピードのあるDFなので、自分の背後にできるスペースをケアできる。そして、1対1にも強い。そのため、ラインを高くしてもリスク管理ができる。だからこそ、今季DFライン全体が背後のリスクを恐れずに高めのライン設定ができている。

 さらに、新外国人のFWウィルソンが「当たり」だった。彼は献身的に守備もするし、シュートの意識も高く、シュートバリエーションも多いし、足元の技術も高いのでボールが収まって前線で起点にもなれる。そのため、関口や太田ら、2列目の選手が飛び出していけるし、ツートップを組む赤嶺真吾へのプレッシャーも軽減されている。

 また、角田誠と富田晋伍のボランチコンビも去年から引き続きキイている。特に角田は激しさをもって相手にプレッシャーにいける選手で、攻撃参加もするキープレイヤー。このふたりに代表されるように、仙台は全員がサボらずにハードワークを続ける。

 今シーズンの仙台のサッカーは、高い位置でボールを奪ってより速く相手のゴール前へ出て行くという、さらに運動量を求められるスタイルなので、体力的にキツくなる夏場にどうなるかという問題はたしかにある。

 実際、昨年は夏場に足踏みをしたわけだが、この先、ケガで離脱している梁勇基が復帰すればFKという武器が増えるのでチーム力の底上げになるだろうし、また、中盤には松下年宏、前線にはベテランの柳沢敦もいるので選手層の厚さもある。それに、仙台はそこまで暑さが厳しい地域ではないので、スタミナ面でもうまくコンディションを維持できるのではないか。

 今の仙台のように、代表クラスの選手があまりいない戦力でも、こういうサッカーをすれば、いい成績を残せるということを日本人指導者の手倉森誠監督が見せてくれているのは、Jリーグにとっていいことだと思う。チームの一体感があり、日本人らしい汗をかく勤勉さ、ひたむきさを感じさせてくれる戦いかたで、ベガルタ仙台はクラブとしてのカラーを築きつつある。

 今シーズンここまで、第5節の磐田戦の同点ゴール(試合は2-2)、第6節の柏戦の勝ち越しゴール(3-2)など、土壇場での強さと勢いを感じさせる仙台が、このまま首位を快走するのか。それとも、今年の仙台の特徴であるハイプレッシャーの全員守備をかいくぐれるチームが現れるのか。リーグ戦がさらに盛り上がってきそうだ。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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