【Jリーグ】好調レッズの屋台骨、阿部勇樹が心に秘めるリベンジ (2ページ目)

  • 河野 正●文 Kawano Tadashi
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 また、浦和はリーグ戦でカシマスタジアムに乗り込むと、ほとほと意気地がなくなり、昨季まで16戦3勝という相性の悪さだった。第5節は、そんな敵地での鹿島アントラーズ戦。その前半5分、阿部が柏木陽介にボールを配球すると、そのまま敵陣に駆け上がり、柏木から再度ボールを預かったあと、ポポに絶品の最終パスを送って決勝点を演出した。結果は3-1の完勝。

 守備の匠人(しょうじん)であり、攻撃の起点でもある阿部の持ち味、特長が、この2試合に集約される。

 今季、1.FCケルンから移籍したDF槙野智章は、「阿部さんのような経験豊富な人がいるから自信を持って守れるし、積極的に攻撃参加もできる」と存在感の大きさを語る。前回在籍時に3年半共に闘ったDF平川忠亮も、「敵の攻撃の芽を潰す腕前は一級品。セットプレイをはじめ、得点能力があるあの経験値はすごい」と万能型の天賦の才を褒めちぎる。

 阿部は、ペトロヴィッチ監督の戦術に深く共鳴している。同監督が広島を指揮した当時を引き合いに出し、「ボールも人もよく動く、千葉とすごく似ている印象がある。リスクを負って攻めるやり方だった」と言った。

 ポジションにとらわれず、複数の選手が流動的に走り、どんどん追い越して敵陣を急襲するアクションサッカーこそ、阿部が理想とするものだ。新監督の流儀は、キャリアの集大成を実現させる魅力が詰め込まれている。

 オシム監督は千葉時代の2006年、末っ子体質が抜け切れない阿部に責任を持たせて成長させようと主将を任せた。ペトロヴィッチ監督も"新顔"の阿部を主将に指名したのだが、6年前とは理由が違う。
「誰もが納得する経験豊かな素晴らしい選手。チームがうまく回らない時にリーダーシップを発揮してほしい」と説明した。

 残留争いに巻き込まれるなど、低迷する古巣に気を揉(も)んでいた阿部だが、今はチーム再生の手応えを感じ取っている。
「後ろからしっかりボールを回し、流動的に動くこのサッカーを続けること。恐れずにやっていくことが重要だ」と、淡々とした口調の中にも大きな可能性を示した。

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