【Jリーグ】鹿島・ジョルジーニョ監督
「短期的にすべてがうまくいくことはない」

  • 小室功●文 text by Komuro Isao
  • photo by AFLO

 それでも、指揮官の信念は揺るがない。標榜するサッカーに対するブレもない。
「今はまだいろいろなことにトライしている段階。改善すべき点はたくさんあるけれど、鹿島には質の高い選手がそろっている。チームみんなで力を合わせていけば、間違いなくよくなる」

 これは単なる強がりからくる言葉ではない。裏づけとなるのは、ナビスコカップ初戦のパフォーマンスだ。Jリーグ第2節を終えた3日後、地元カシマスタジアムに神戸を迎えた一戦。前半20分に大迫勇也が先制点を決めると、前半ロスタイムには遠藤康が続いてゴール。守備では新人の山村和也が公式戦初スタメン、フル出場を果たすなど、次代を担う人材が躍動した。

「落ち着いてボールを運び、相手ゴールにたどり着いて、しっかり得点するという、私が見たいサッカーをやってくれた。ボランチの小笠原(満男)と増田(誓志)のポジショニングがよく、(攻撃的MFの)遠藤にしろ、柴崎(岳)にしろ、絞るところでは絞り、離れるところでは離れるなど、中盤のオーガニゼーションが素晴らしかった」

 そう満足気に試合を振り返った指揮官は、続けてこうも語った。
「選手たちがスパイクのつま先までハートを込めてプレイしていたことが、大きな、大きな、収穫だ」

 主将の小笠原がジョルジーニョ監督の思いをさらに代弁する。
「システムがどうとか、戦術がどうとか、いろいろ言うけれど、今日のような気持ちだったら、どんなやり方でもうまくいくし、逆に今日のような気持ちがなければ、何をやってもうまくいかない。大事なのはそこだから。あとは続けていくこと。ひとつ勝ったくらいじゃ満足できない。ここで安心しているようでもいけない」

 結局、ナビスコカップの勢いは継続できずに、リーグ戦での初勝利はお預けのままだが、現役時代から世界のハイクラスでしのぎを削り、数多くの修羅場を潜り抜けてきたジョルジーニョ監督。それだけに、逆境に立たされれば立たされるほど冷静さを増す。

「監督やスタッフが代わり、選手の入れ替えもあった。短期的にすべてがうまくいくことはない」と試合後の会見では堂々と構え、慌てたそぶりを見せない。指揮官が右往左往してしまうのが、チームにとって何よりマイナスであることを知り尽くしているからだ。

 その指揮官のもと、チームの一体感は失われていない。確かに出足は躓(つまず)いたが、ここからいかに巻き返していくのか。ジョルジーニョ監督の手腕の見せどころである。

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