【Jリーグ】スーパー杯で見せた王者の貫禄。
進化する柏に再び奇跡の予感

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 北嶋秀朗はこの日の勝利に、「みんなが同じ意識でやれていた。チームとして耐えて戦った結果」だと話す。

 橋本和も北嶋の言葉に同調する。

「試合の中で、耐える時間帯は絶対にある。でも、そこを耐えれば、必ず自分たちの時間が来ると思っていた」

 それにしても、前半はあまりに押され過ぎではないのか。そんな質問をぶつけてみても、橋本の反応は実にあっさりとしたものだ。

「いや、昨年も(同じような展開が)たくさんありました。だから、自分たちも割り切って守ることができるし、先制点が入ってからはいい感じで試合を運べた。後半は、効率のいいカウンターも出せたし。それが決まっていれば、もっとよかったんですけどね」

 J1優勝までの道のりで心得た、勝負どころを見極める術、とでも言おうか。確かに、出来が悪いなりに勝てるかどうかは、長いシーズンを戦い抜き、最終的に頂点に立っているためには重要な要素である。

 キャプテンの大谷秀和も、今はまだ「昨年の状態にはほど遠く、そこへ戻そうとしているところ」だとしながらも、「100%ではない中で、結果を出せたのはいいこと」だと語る。その言葉の裏には、J1を制した自信と貫録が見てとれる。

 だからと言って、それは、決して油断や慢心につながるような類のものではない。大谷が続ける。

「昨年の優勝は、ノーマークだった中で、自分たちのサッカーができたから。今年は、柏に対してチャンピオンという気持ちで相手も来るので、難しさもあると思うが、それをはね返せる強さを身につけたい」

 今年はアジアチャンピオンズリーグも並行して戦わなければならず、過密日程も不安視される。だが、橋本が「クラブW杯を経験しているから」と話すように、昨年12月はJ1最終節からクラブW杯3位決定戦まで、実に16日間で5試合を戦い抜いた。「もちろん疲れないわけじゃないけど、あれだけ忙しい中でやれた経験が糧になっている」と、橋本は言う。

 勢い込んで攻め入ってくるFC東京を巧みにいなし、柏は今年最初のタイトルを手に入れた。

 王者の貫録をそこはかとなく漂わせながらも、ひたむきに戦う姿勢は決して失っていない。そこに、今年も柏がJ1の主役たりうる理由がある。田中順也が言う。

「今年も変わらず、挑戦者の気持ちでやりたい。勝負に対する覚悟はあるし、戦い抜こうという気持ちもある」

 ミラクル・レイソル第2章は、幸先のいいスタートで幕を開けた。

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