検索

サッカー日本代表のブラジル戦勝利の裏で忘れてはいけないこと 奇襲だけではワールドカップベスト8は難しい (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【敵陣でのプレーがほとんどできなかった前半】

 まず、最終的に日本が2点のビハインドを背負った前半は、ほぼブラジルのペースで展開。特にスコアが0-2になった32分以降の日本には反撃の糸口さえ見当たらず、極めて厳しい戦況に陥っていた。

 最大の要因は、試合後会見における森保監督の弁に集約される。

「実は、前半も後半のようにプレッシャーをかけたかったので、選手たちには(試合の)入りはアグレッシブに行くこと、試合が落ち着いた時には基本を前向きのブロックからプレッシャーをかけてボールを奪ってから攻撃を仕掛けるということを、トレーニングやミーティングで準備をしていました。ただ、私自身の伝え方がよくなかったのか、最初はプレッシャーがうまくかけられなかった。そこは、自分自身の反省としてあります。

 もうひとつは、ブラジルの圧を選手が感じてしまい、少し構えてから行こうというところにつながったのは、2022年カタールW杯のドイツ戦で、アグレッシブに入ってすぐにかたちを作らなければいけなかったことに似ているので、そこはチーム全体の経験値を高めていかなければいけない。もっと自信を持って試合に挑めるよう、私自身が選手の背中を押してあげられるように声掛けしなければいけないと感じました」

 つまり前半の日本は、ベンチの狙いとは裏腹に、ピッチに立った選手たちが前からのプレスを避けた、ということになる。選手の判断を最優先する現体制の方針からすれば、たとえ事前の伝え方を変えたとしても、今後もこういった現象は避けられないだろう。

 少なくとも前半は、W杯レベルの相手に対して前からハメて試合序盤から主導権を握るという戦い方の積み上げについては、手応えを得られなかった。それは、ボール支配率にも表われていて、ブラジルの66.6%に対して日本は33.4%。特に30分から前半終了までの時間帯で日本は27.3%と、両ウイングバック(WB)にアタッカーを配置する3-4-2-1の目的のひとつでもある、敵陣でのボール保持はほとんどできなかった。

 もっとも、ブラジルが4バックに代表経験の浅い選手をテスト起用していたこともあり、日本がまったく攻撃できなかったわけでもなかった。特に右サイドを個人技で突破した堂安律と久保建英のふたりと、左の中村敬斗がアタッキングサードに潜り込んで計8本のクロスを供給。ただ、すべて相手に跳ね返されたという点では、敵陣での縦パスが3本しかなかった中央攻撃とのバランスも含めて、パラグアイ戦の課題は残されたままとなった。

 また、ミドルゾーンで5-2-3、自陣では5-4-1を形成する守備についても、2失点を喫したことで課題を残した。もちろん、ブラジルの2ゴールは日本が両WBに本職を配置していたとしても避けられなかった可能性が高かったが、どちらもDFラインの裏を突かれた失点であるのはパラグアイ戦と同じ(1失点目)。チーム全体の守備として、引き続き自陣ボックス付近でのディティールを見直す必要はあるだろう。

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る