三笘薫のウイングバック起用はミスキャスト 相手が強ければ「超攻撃的」になどなり得ない (3ページ目)
【低い位置で守れば前へのベクトルは鈍る】
カタールW杯の三笘はまさにそうだった。宝の持ち腐れに終わった。4試合すべて交代出場だったことも解せない点だ。森保監督はある時期まで、三笘を明らかに軽んじているように見えた。
「三笘が大会前の合宿にどんな状態で臨んだか。コンディションを見れば納得していただけるはずだ」とは、カタールW杯当時の森保監督の弁だが、そもそも三笘が代表チームに定着したのは、カタールW杯が迫った時期(2021年11月)だった。選ぶのが遅すぎた。
三笘は東京五輪に臨んだU-24日本代表にも、コンスタントに選ばれていたわけではない。川崎フロンターレで鮮烈なJリーグデビューを飾った2020年の段階で、筆者には現在の姿がはっきりと見えていた。日本代表はおろか、五輪チームにも選ぼうとしない森保監督に歯がゆさを覚えたものである。
東京五輪では、本大会直前まで3バック(5バック)だった布陣を4バックに変更したのはいいが、コンディションの問題はあったにせよ、三笘の出場時間は、アタッカー陣のなかで前田大然と並んで最も少なかった。
森保監督は三笘のウイングプレーに、筆者ほど魅力を感じていないのではないか。そう考えれば辻褄は合う。だが、三笘をウイングバックで使うことを、筆者は看過することができないのである。
「いい守備からいい攻撃」を、何かにつけて口にする森保監督だが、それはチームとして目指すものだ。三笘個人に深い位置で守るバックの役目を課せば、その前方向へのベクトルは鈍る。自軍の低い位置から長い距離を駆け上がれば、ドリブルのキレ、アタック力、推進力は最後の局面で失われる。三笘とてスーパーな超人ではない。
ウイングバックというポジションの本質を理解すれば、「超攻撃的」とはしゃぐことはできないはずなのだ。そもそも日本人にはウイングバックに適性がありそうな選手は少ない。CB、CFにも言えることだが、ウイングバックを務める選手は、鋼のような身体と馬力、直線性......言ってみれば、陸上の十種競技の選手のようなスケールの大きい万能性が不可欠になる。
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