日本代表が抱えるジレンマ 強くなったがゆえに世界で勝つための発想の転換が必要になってきた

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 日本代表がシリアに5-0で勝利し、ワールドカップアジア2次予選を6戦全勝で終えた。

 北朝鮮とのアウェーゲームは没収試合による不戦勝(3-0での日本の勝利扱い)ではあったものの、残る5試合は総得点21で無失点。圧倒的な力の差を見せつけた日本は、言うまでもなく、グループ首位での最終予選進出である。

 2次予選最後の試合となったシリア戦にしても、玉砕覚悟でハイプレスに打って出た相手をあしらうように、落ちついてボールをつなぎ、前半なかばまでに3点を連取。個人能力の違いでいとも簡単にゴールをこじ開けてしまう上田綺世や堂安律を見ていると、日本が強くなったことをあらためて実感させられた。

シリアに5-0と大勝し、2次予選を6戦全勝で終えた日本代表 photo by Ushijima Hisatoシリアに5-0と大勝し、2次予選を6戦全勝で終えた日本代表 photo by Ushijima Hisatoこの記事に関連する写真を見る とはいえ、大勝ばかりが続く一連の試合を、素直に喜べなかったことも事実である。

 昨年11月に始まった2次予選を振り返ると、大きな実力差がある相手との試合であるにもかかわらず、毎回ベストメンバーが招集されてきた。

 その結果、ヨーロッパ組、特にチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグなどのUEFAの大会を戦うクラブに所属する選手は、身体的にかかる負担が大きくなり、ケガをする(コンディションを崩す)選手が次々に現われた。

 CLでベスト8に進出したアーセナルの冨安健洋も、ベストコンディションで世界最高峰の舞台に立ち続けたとは言いがたく、ELでベスト16に進出したブライトンの三笘薫は、とうとう戦線離脱のままシーズン閉幕を迎えることとなった。

 これまで日本代表がワールドカップで世界の壁にはね返されるたびに、「個の力を上げる必要がある」と言われ続けてきた。それは決して外野の声ばかりでなく、ピッチに立っていた当の選手からも聞かれた言葉である。

 ところが、せっかく選手が力をつけ、ヨーロッパの高いレベルでプレーできるようになったにもかかわらず、日本代表の活動が彼らの足を引っ張ってしまったのでは本末転倒だ。

 5-0で勝ってしまうアジア予選に出場するのと、世界中から一流選手が集結するCLでプレーするのとでは、どちらが個人能力を高めるために重要であるかは、考えるまでもないだろう。

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