日本代表戦をウルグアイはどう戦ったか 主力を欠く急造チームでも「相手の長所を出させない戦い」に成功

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 南米の強豪ウルグアイは、どのように日本と戦ったのか?

 日本戦後、ウルグアイ国内各紙のウェブ版を見渡しても、日本代表に関する記述は残念ながら乏しい。

「浅野(拓磨)に決められていたら、流れは変わっていたかもしれない」
「韓国と同じで、スピードは武器」
「後半、体力的に落ちたところ、西村(拓真)にゴールを決められた」

 最小限の説明で、批判はないが、称賛もない。

 そもそも、日本だってウルグアイに関するニュースは二の次だろう。サンティアゴ・ブエノ、フェリペ・カルバージョが代表デビューだったことやフェデリコ・バルベルデが初主将だったことが大きく報じられているわけではない。各国それぞれで重要度の高いニュースがあるのは当然だ。

 ただ、ウルグアイにとって、今回の一戦は事情が入り組んでいた。

 カタールW杯後、ウルグアイはディエゴ・アロンソ監督がグループリーグ敗退後に退任している。マルセロ・ビエルサ監督の招聘なども噂されるが、会長選の遅れなどもあって、後任は決まっていない。急遽、U‐20代表監督のマルセロ・ブロリが率いることになったが、今回のアジアツアーのために組んだ"暫定"だ。

「自分が率いるのは日本戦、韓国戦の2試合だけ。あくまで暫定監督で、できるだけ多くの情報を次の新代表監督に残すのが役目です」

 ブロリが記者会見でそう断っていたように、ひとつの興行の域を出なかった。
 
 もっとも、ウルグアイは日本を軽んじていたわけではない。彼らはピッチに立つ限り、勝負にこだわる。特に1対1の局面で負けることは、子どもの頃から許されていないだけに、かなりの激しさを見せた。球際では、熱いやりとりがあった。急造感のあるチームながら、日本のストロングポイントを出させないため、選手も戦術に適応していた。

「Recuperar rapido la pelota」(ボールを早く奪い返す)

 ブロリ監督はそれを主眼に置いていたことを明かしたが、日本が支配するゲームになることを前提にしていたのだろう。

 事実、ウルグアイは日本のよさを消していた。DF、MF、FWと3つのラインが緊密に距離を保ち、ミドルプレスでラインを越えさせなかった。その点で強固さを感じさせた。日本の攻撃が三笘薫一本やりで、左サイドバックは明らかな穴となっており、戦術的な練度が見えないのとは対照的だった。

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