森保一監督は気がついているのか。日本代表が中国戦でチャンスをつくれなかった理由 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by KYODO

数少ない評価を上げた選手は...

 鈴木を呼ばない理由は、単純に森保監督が嫌いなのだろう。それは代表監督に許された選択肢ながら、それで結果が出なければ、何らかの責任をとる必要が生じる。なぜ鹿島の選手を1人も選ばずに、広島の選手を6人も選んだのか。4980人しか集まらなかった鹿島スタジアムでの香港戦、そして0-0で引き分けた中国戦と、その責任を追及したくなる試合が続く。

 収穫を挙げるならば宮市亮だ。左サイド、真ん中、右サイドと、攻撃のルートは大きく分けて3つある。そのうち2つ(左と真ん中)のルートは円滑に機能しなかった。苦戦の原因だと述べたが、宮市が持ち前のスピードで縦突破を披露した右サイドは、そうした意味で唯一の救いだった。

 右ウイングの俊足プレーヤーと言えば、一番に伊東純也を想起するが、宮市の快足ぶりはその伊東さえも上回る、凄みを湛(たた)えていた。沈むようなフォームから鋭くも滑らかに加速し、あっという間にトップギアに入る。伊東以外にも古橋亨梧、前田大然、浅野拓磨ら、現日本代表には数多くの俊足選手が存在する。宮市はそこに割って入れるか。何を隠そう筆者は大会前、少しばかり懐疑的に見ていた。だが、いまは違う。

 先行するライバルとは備えているエンジンが違う。排気量に勝るので、疾走するフォームに安定感がある。183センチという上背に加え、幅もあるので、迫力もある。代表スタメンが狙える位置に宮市はいる。

 宮市の下で、よいコンビネーションプレーを見せた右SB小池龍太も評価を上げた選手だ。長友、佐々木、杉岡らがプレーする左SBの選手たちと違い、動きがMF的だ。山根視来を俊敏にした感じである。代表の右SBにはさらに酒井宏樹がいる。層は厚い。左SB勢はそれだけに貧弱に見える。

 最終戦となる韓国戦の左SBの先発は、森保監督が好きな佐々木だと読むが、筆者なら左もできる小池をそこで使いたい。左サイドに染みついた窮状を、このまま放置するわけにはいかないのだ。

 森保監督で大丈夫なのか。残り4カ月弱で、放置されている諸々の問題を解決することはできるのか。就任当初から抱いている疑念は、ここにきて膨らむばかりである。

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