海外組を含めた日本代表でも試したくなった香港戦の選手とコンビネーション (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

4-3-3より4-2-3-1

 とはいっても、代表3試合目の選手(岩田)と新人(藤田)の関係だ。序盤は実際、不安定さを覗かせたが、時間の経過とともに落ち着きを見せ、後半18分にはこの2人で決定機を演出するなど、存在感を示すことに成功した。

 岩田はチームではCBも兼務するため、ストッパータイプの守備的MFに見えるが、広いエリアでパスワークに参加できる多機能性も兼ね備える。遠藤航に似ていそうで似ていないキャラクターだ。一方の藤田も、言うならば守田英正に似ていそうで似ていないキャラクターである。微妙と言えば微妙だが、確実に異なる「差」が遠藤、守田らとの間には存在する。

 1ボランチ(4-3-3)では、その微妙な色を表現することはできない。ヘソの色は1種類に限定されるが、ダブルボランチ(4-2-3-1)になると2色になる。香港戦ではそこが魅力的に映った。即席チームに安定感をもたらす要因になっていた。

 通常の4-3-3では遠藤の一択だ。森保監督は遠藤と心中するような采配を振るうが、W杯のグループリーグ3試合に限っても、遠藤ひとりで乗りきることは、筆者は無理だと考える。体力的な問題に加えて、上記に述べた色の問題、さらには4-3-3という布陣と選手交代5人制の相性も拍車をかける。

 4-3-3ではワンボランチは代えにくい選手になりがちだが、選手交代5人制は、代えることを奨励する新ルールだ。W杯のような短期集中トーナメントの場合はなおさらである。ボランチにも攻撃陣のような多彩さが求められている。相手や試合展開に合わせ、変更や調整が利くポジションにしておくべきなのだ。4-3-3より4-2-3-1。純然たるA代表にも採用すべき概念であることを、岩田と藤田がダブルボランチを務めた香港戦を見てあらためて痛感した次第だ。

 問題を挙げるならば左サイドだ。杉岡と相馬の関係は右に比べて数段落ちた。純然たるA代表のスタメン候補である、「長友佑都と南野拓実」も、「伊東純也と酒井宏樹(山根)」に比べて大きく落ちる傾向があるが、香港戦でもそれと似た症状をみせた。森保采配の一番の問題点は左サイドにあり。残る2戦、中国戦、韓国戦の采配に目を凝らしたい。

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