森保一監督の本性が見えた日本代表メンバー。選出ゼロの鹿島ファンはブーイングで応えるべきだ (2ページ目)

  • ,杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

広島6、鹿島0が意味するもの

 選ばなければならない選手、外せない選手は少ない。代表で準レギュラー級の谷口、山根ぐらいに限られる。それ以外は誰を選んでも構わない。代表監督が、こうした縛りが少ないなかで選考に及ぶ機会は珍しい。新監督に就任した直後の、いわゆる新星チームでも、前監督時代からの代表選手をバッサリ切れば、波風は立つ。気遣いはしなくてはならない。それが今回の選考には不要。真っ新なキャンバスにフリーハンドで筆を入れる状態にあった。

 森保一監督は独自の言葉を持たない監督と言っていいだろう。本音を語らないというか、見せないというか、言質を取られるのを恐れているのか、とにかく就任してここまで、強く主張することを避けてきた。自らの色を隠そうとしてきた。逆に言えば、それが没個性という個性になっていた。それが一転、個性を発揮しなければならない立場になった。これまで森保監督から拝むことができにくかった奔放さに、注目が集まっていた。

 筆者は正直、もう少しバランス感覚に富んだ常識人かと思っていた。自由な環境のなかにあっても、各チームに気遣い、バランスを考慮した選考をするものと考えていた。確かにサンフレッチェ広島は好調かもしれない。森保監督にとってはその前身となるマツダで育ち、後に監督まで務めた親しいチームでもある。多くのファンもその事実を知っている。そうしたなかで広島の選手を6人も選出した。

 横浜F・マリノス7人、広島6人、川崎、湘南各3人、柏、名古屋、神戸各2人、浦和1人。クラブ別の内訳を見れば、森保監督の「広島愛」は一目瞭然となる。逆に愛が感じられない筆頭は鹿島になる。Jリーグで2位につけながら選ばれた選手は0。ベトナム戦(3月)、チュニジア戦(6月)でスタメンを飾った上田綺世が、直前にベルギーに移籍したという事情を抜きにしても、2位のチームから誰も選出しないというのはバランス的に問題だ。

 実際、鈴木優磨、樋口雄太、三竿健斗など、代表に相応しい選手は確実に存在する。嫌いな選手、好みではない選手であったとしても、義理だとしても、1人、2人選ぶ。これが常識というものだ。しかも、初戦の香港戦は鹿島スタジアムが舞台となる。

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