INAC神戸の社長が選手たちに「本当の数字」をすべて伝える理由。WE2年目に向けての秘策も語った (3ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text by Hayakusa Noriko

連覇の先にある目標

 チャンピオンとなったINAC神戸が目指す来シーズンのスタイルとはーー安本氏はどんな発想を抱いているのだろうか。

「連覇を目指せるのはINACだけですから、そこを目指すのは当然として、女子サッカーの繁栄のためにもエンターテインメントの追及、観客のみなさんといかに一体感を作れるか。これがないと連覇したところで全く成長がない。知らないところでやっているWEリーグよりも、より多くの人に見てもらえるWEリーグにしたいですね」

 営業担当でもある安本氏ならすでにいくつか案を持っていそうだ。ズバリ、そのための秘策はこうだ。

「テレビに出る機会を増やすこと。スポンサーさんのCMに出演する機会を作れないか。期間限定でもいい。やはりテレビの力は大きいですよ。関西の地上波で『Jフットニスタ』(朝日放送)というサッカー番組があるんですけど、基本的にはガンバ大阪、セレッソ大阪、京都サンガ、ヴィッセル神戸のJリーグチームをカバーしてるんですが、そこにINACが入っていて、男子チームの調子が悪くなるとINACの尺が伸びる(笑)。

 そうして取り上げてもらうことで、JリーグファンにもINACの名前を知ってもらえるので本当にありがたいことです。もちろん、長年応援してくれているラジオ関西の『カンピオーネ!レオネッサ!!』でも、INACのことをもっと発信していきたいと思っています」

 9年ぶりにチームにタイトルをもたらした星川監督のあとを誰が担うか、監督人事にも注目の今オフ。シーズンを終えたばかりでも安本氏に休息の時間はまだ訪れそうにない。

「初年度は成長のシーズンだったし、優勝するにはこれだけストイックにならないといけないと実感しました。でも楽しいことをしようと思ったらこの先にしかない。監督もね......あっと驚く人事になるかも! 優勝するために星川監督を呼んで、見事それに応えてくれました。『監督がいなくなっても勝てましたよ!』って選手から星川さんに言わせてあげたいんですよ。そうじゃないと成長にならないですから」

 これまで日本の女子サッカーが築いてきたものと、新しい女性スポーツエンターテインメントを目指して歩き出したWEリーグ。両者がうまく融合しきれていない今が踏ん張りどころだ。ここに生じる摩擦は想定されていたものばかり。この小さくはない向かい風をうまく引き込めたチームが、新しいWEリーグの形を見つけることができるはずだ。INAC神戸レオネッサというチームがその先駆けとなるかもしれない。

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