森保ジャパン、衝撃の現状。布陣の意図と運用方法が明確に共有できていない

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

後半にシュート3本で3失点

 この試合の前半で、チュニジアが記録したシュートは5本。そのうち枠内シュートは2本で、もっとも惜しかったのは、立ち上がり4分のショートコーナーでアリ・エラブディ(4番)が入れたクロスにフェルジャニ・サシ(13番)が頭で合わせたシーン。枠外のシュート3本は、いずれも遠めから狙った可能性の低いミドルシュートだった。

 また、前半で日本が自陣ペナルティーエリア内に進入を許したのは2回。相手のスローインから右サイドを突破された3分のシーンと、中央から左に展開されたあと、モハメド・ドレーガー(20番)にアーリークロスを入れられた24分のシーンだ。

 ただし、いずれも日本がしっかりと対応し、決定的なピンチと言えるものではなかった。そういう意味では、前半は日本が無失点に相応しい守備ができていたと言える。

 では、3失点を喫した後半の守備はどうだったかというと、実は後半のチュニジアのシュートは3本だけだった。つまり、3本すべてがゴールに結びつく、とても珍しい現象が起きている。

 55分の1失点目は、右センターバックのビレル・イファ(2番)が右サイドに入れたロングフィードに対し、競り合おうとして前に出た伊藤が右ウイングのアニス・ベン・スリマン(25番)と入れ替わってしまい、前を向いたベン・スリマンが吉田麻也の背後を狙うタハ・ヤシン・ケニシ(11番)にスルーパス。ここで焦った吉田が自陣ペナルティーエリア内でスライディングしてケニシを倒してしまい、先制ゴールにつながるPKを与えた。

 76分の2失点目は、相手ペナルティーエリア内の間接フリーキックをGKがロングキックすると、そのボールに対して吉田、板倉、シュミット・ダニエルが譲り合ってしまった一瞬の隙を突かれ、ボールを回収したユセフ・ムサクニ(7番)のパスをサシ(13番)がゴール。

 そして後半アディショナルタイムの3失点目は、吉田から三笘薫に入れたパスがずれたところを、最終的にイサム・ジェバリ(17番)に回収されて、そのままドリブルシュート。ペナルティーエリア手前から放った強烈なミドルシュートがダメ押しゴールとなった。

 しかしながら、1失点目につながるPKを与えたシーンは、吉田の背後で板倉がしっかりカバーに入っており、焦った吉田の個人的な判断ミス。2失点目も連係不足による偶発的な失点であることを考えると、再び起こり得るとは考えにくい。3失点目にしても、2点のビハインドを追うべく前がかりになって与えてしまったゴールだった。

 要するに、いずれの失点も日本の守備システムの構造的な問題が原因とは言えず、少なくともブラジル戦で露呈したような守備戦術の破綻はなかった。実際、後半に日本が自陣ペナルティーエリア内に進入を許したのは、1失点目と2失点目のシーンの2回だけで、それ以外はほとんどチャンスらしいチャンスを作らせなかったというのが実際のところだった。

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