サッカー日本代表の定まらない攻撃の形。森保監督は本番を想定して戦っているのか? (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

ポゼッションからの遅攻によるチャンスメイク

 森保ジャパンが3バック(5バック)の相手と対戦したのは過去12試合あったが、日本が基本布陣を4-3-3に変更してからは、今年3月のアジア最終予選最終節のホームでのベトナム戦しかない。

 控え組中心で臨んだその試合、日本は前半20分に失点したあとも攻撃の糸口を見つけられず、後半開始から中盤の旗手怜央を下げて伊東純也を起用。布陣を4-2-3-1に変更して反撃を試みたが、結局1-1のドローに終わっている。

 ただ、その試合のベトナムの布陣は、同じ3バック(5バック)でも守備時は5-4-1。中盤4人を最終ラインの前に並べて「5-4」のブロックを形成したが、この日のガーナは中盤に3人しか配置されておらず、そのうえ前線も横並びから縦並びに変化するため、中盤の両脇に大きなスペースが生まれる陣形だった。

 当然、この陣形では4バックの日本にハイプレスも仕掛けられない。実際、試合を通してその狙いさえ見られなかった。

 こうなると、日本がサイドのスペースを使いながら敵陣に前進することは容易だ。試合の立ち上がりこそ相手の出方をうかがっていた日本だったが、15分、右サイドでパスをつなぎ、最後は山根視来のクロスに対してゴール前に顔を出した柴崎岳がヘディングシュートを狙ったシーンあたりから、サイドを起点にゲームを支配するようになっている。

 4-3-3に布陣変更して以降の日本は、出場する選手によって攻撃のかたち、パターンが変化する傾向がある。8日前のパラグアイ戦では、サイドチェンジを有効な攻撃の糸口として、いくつものチャンスを作っていた。

 しかしこのガーナ戦では、相手の布陣と日本の選手のキャラクターが影響し、敵陣でボールを保持し、サイドを起点にパスをつないで打開する攻撃が大きな武器になっていた。それを象徴するのが、73分までに決めた日本の3つのゴールシーンだ。

 まず、29分に生まれた山根の先制ゴールは、時計の針を巻き戻すと、28分に自陣右サイドで遠藤のヘディングを堂安律が引き取ってから始まったポゼッションにまで遡る。

 そこからパスをつなぎながら敵陣に前進し、最後は右サイドの山根、堂安、久保建英の3人によるパス交換からフィニッシュ。山根のシュートをアシストした堂安のワンタッチパスを含めると、実に計22本のパスをつないでから奪ったゴールだった。

 山根のミスパスから喫した失点直後の45+1分に三笘薫が決めたゴールも、始まりは敵陣右サイドでの山根のスローイン。ボールを吉田麻也に預けてから始まったそのポゼッションからゴールまで、計9本のパスをつないでいる。

 そして後半73分の久保の代表初ゴールも、板倉滉の自陣でのインターセプトをきっかけに、計9本のパスをつないでから、左サイドの三笘によるドリブルの仕掛けから生まれたものだった。

 これらゴールシーン以外でも、前半20分の上田のヘディングシュート、あるいは後半25分の三笘のヘディングシュートにそれぞれ至るまでは、いずれもポゼッションからの遅攻によるチャンスメイクだった。

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