久保建英「なんで出してくれないのか」。ブラジル戦での悔しさをバネに代表初ゴールは生まれた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「たかが1点というわけじゃないですけど、喜びすぎるのも......。そう思って、試合後のインタビューでは、いつもどおり冷静に、って思っていました」

 久保建英(21歳)はそう明かし、自身の代表初得点を振り返った。神戸でのガーナ戦、73分に左足で突き刺した。18歳で代表デビュー後、早くも3年が経過していた。

「周りの選手は簡単なゴールでも決めていって。『そこにいたらよかったのに』とか、『なんでブロックされるんだ、いつもなら入るのに』というのはありました。周りには『もっとチャンスがあったのに』とか言われますが、確かに17試合で1得点ですけど、ここからたくさん点をとればいいわけで。ゼロと言われなくなったから、落ち着いてやれるかなって」

 やや早口だったのは、高揚感によるものだったのだろうか。人知れず、重圧も感じていたのだろう。結果を出すしかなかった。

 この試合でなぜ、久保は代表初ゴールを決められたのか?

ガーナ戦で日本代表初ゴールを決めた久保建英ガーナ戦で日本代表初ゴールを決めた久保建英この記事に関連する写真を見る この日、森保ジャパンは適材適所の選手起用になった。これまでは「負けないため」の人選で守備に比重を置いたため、選手のよさを生かすよりも戦術にはめ込む形だった。南野拓実のサイド起用など最たる例だろう。ガーナ戦は同じ4-3-3だが、守備ありきではなく、各選手の持ち味を生かした布陣になった。

 久保は右のサイドアタッカーではなく、インサイドハーフの一角でプレーした。もっとも、事実上はトップ下に近い。走り回って前後の敵は潰したが、アンカーの遠藤航よりもトップの上田綺世に近かった。

 特筆すべき点は、堂安律との連係にある。左利き同士だけに独特の呼吸でボールを運び、仕掛けることができた。東京五輪代表でもプレーしており、ふたりが絡むとプレーに緩急が生まれ、足し算ではなく、掛け算になる感覚があった。

 29分の先制点のシーンは、その典型だろう。右アウトサイドにいた久保が幅を作り、サイドバックの山根視来からボールを受ける。そこでインサイドにポジションを取った堂安へパス。堂安は追い越して駆け上がった山根につなげ、ゴールが生まれた。

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