田中碧が中盤で活躍できる理由を風間八宏が解説。この先の成長のカギは「ドイツでチームの中心になれるかどうか」

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

所属チームの中心としてプレーできるか

 華々しいデビューを飾ったオーストラリア戦以降、日本代表では欠かすことのできない戦力として活躍している成長株の田中。では、所属のデュッセルドルフでも自分の持ち味を最大限に発揮するためにはどうすればいいのか。

「中盤の選手というのもありますが、最終的には自分のタイミングで周りが動いてくれるようにするしかないでしょうね。たとえば、レアル・マドリードならルカ・モドリッチのタイミングで周りの選手が動きます。モドリッチがチームの中心選手なので、周りがモドリッチに合わせるのは当然ですよね。そういうことです。

 ただ、それを確立するのは簡単ではありません。日本人選手と違って、向こうの選手たちはなかなか言うことを聞いてくれないので、大変だとは思います。でも、そこをどうするのかは、結局は田中次第です。

 かつての中田英寿、中村俊輔らは、ヨーロッパに行ってチームのなかで中心になれるかどうかの競争をしていました。チームの中心選手として先発を勝ち獲れるのか、別の中心選手の控えとしてベンチスタートになるのか。

 最近は、以前とは比べものにならないほど多くの日本人選手がヨーロッパでプレーするようになりましたが、チームの中心ではなく、駒として見られている選手が多いような印象があります。そういう意味では、チームの中心になれるだけの能力を秘めている田中が、今後どのような成長を見せてくれるのか、楽しみに見ていきたいと思います」

 東京五輪世代の田中は、現在伸び盛りの23歳。完全移籍が決まったデュッセルドルフで、来シーズンはどんな進化を遂げるのか。そして、その成果をカタールW杯でも披露してくれるのか。今後も要注目の選手である。

田中碧
たなか・あお/1998年9月10日生まれ。神奈川県川崎市出身。川崎フロンターレの育成組織から2017年にトップチームに昇格。2年目からレギュラーMFとして活躍し、2021年6月からはドイツ・ブンデスリーガ2部のデュッセルドルフでプレーしている。日本代表は、五輪代表として2021年東京五輪の全6試合でプレー。A代表ではカタールW杯アジア最終予選のオーストラリア戦(2021年10月12日)で、初先発初ゴールを挙げた。

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風間八宏
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。

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