【日韓W杯から20年】熱狂の2002年ワールドカップ。日本の4試合は「ヨーロッパの下部リーグのような試合だった」 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • 六川則夫●撮影 photo by Rokukawa Norio

2002年6月9日/グループステージ第2戦 
日本 1-0 ロシア

日本がW杯初勝利を挙げた、ロシア戦のメンバー日本がW杯初勝利を挙げた、ロシア戦のメンバーこの記事に関連する写真を見る

ダイレクトプレーとバス駐車

 ワールドカップ初勝利がこのロシア代表戦だった。51分の稲本のゴールが決勝点となっている。

 ロシアがベルギーほどコンパクトでも守備的でもなく、2戦目ということもあって、初戦よりも試合展開は落ち着いている。日本もディフェンスラインでパスを回す余裕があった。ただ、そこからの崩しがないのはベルギー戦と同じ。縦パス、斜めのラストパスのいずれも長めの浮き球で、得点の匂いはほとんどしない。

 パスをつないで運ぶ、相手ゴールに近づいて崩すという作業がほぼない。これは中盤が潰し合いの場になっていた当時のサッカーがそうだったという面もあるが、ロシアは後方に構える守備なので、運ぼうと思えばできたはずだ。

 そうしなかったのはトルシエ監督の考え方による。「10~15秒の攻防を200回繰り返すのが現代サッカー」という認識なので、ダイレクトプレー志向が強かったのだ。

 互いにコンパクトなので潰し合いになるが、そのぶんディフェンスラインは浅いから直接的にそこを狙う。現在でも「縦に速い攻撃」というダイレクトプレーの指向性は残っている。

 ダイレクトプレーの考え方は古くからあるが、ハイプレスやコンパクトネスの流行とともに何度もリバイバルしていて、トルシエ監督も何度目かのリバイバルのトレンドに乗っていたわけだ。

 あまり決定機のないなか、決勝点は稲本。中田浩二がディフェンラインの手前へ入れたクロスを柳沢が柔らかいタッチでフリック、そこへDFと入れ替わるように抜け出した稲本が決めた。

 このあと、日本は5バックの「バスを置く」守備でロシアの猛攻をしのぎきり、記念すべき初勝利を挙げた。ハイラインが看板だった日本だが、ヨーロッパ遠征でフランス代表に0-5に大敗したあとのスペイン戦で、5バックをやったことがある。その時の相手のホセ・アントニオ・カマーチョ監督がまさに「日本はバスを置いた」と言っていたものだ。

 ロシアはスペインほど強力ではないがパスワークには優れていて、日本はベルギー戦でライン裏を攻略されて2失点していたことを考えると、大型バスを横づけするような守備ブロックは現実的な対応だった。

 初戦に続いて貴重な得点をゲットした稲本、またも絶妙アシストの柳沢、中盤で攻守をコントロールした戸田の活躍が目立ったが、総力でもぎとった3ポイントだった。
(後編へつづく)

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