サッカー日本代表の「表と裏」が見えた。ベトナム戦は意図がよくわからない全取っ替えだった (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 とりわけ不毛なテストに感じたのは、中盤3枚の構成だ。

 最終予選全体の潮目が変わったホームでのオーストラリア戦以降、日本代表の屋台骨を支えてきたのは、MF遠藤航、MF田中碧、守田の3人である。彼らが互いの特長を理解し合い、いわば阿吽(あうん)の呼吸を作り上げることで、チームは円滑に連動するようになっていった。

 だが、裏を返せば、彼らが次第に替えの効かない存在になってしまったということでもある。3人のうちひとりでも欠けたら、今の日本代表は危うい。だからこそ、スペア探しが急務だった。

 しかも、幸か不幸か、所属クラブの事情を優先した遠藤が、ベトナム戦を前に日本代表を離脱。新たなテストを行なう絶好のチャンスだったはずである。例えば、遠藤の代わりに守田をアンカーで起用し、空いたインサイドMFにはMF旗手怜央を入れる。あるいは、4-3-3自体を捨てるのも、それはそれでひとつの選択肢だっただろう。

 にもかかわらず、フォーメーションはそのままに、中盤3枚を総取っ替え。結局、旗手も、MF原口元気も、MF柴崎岳も、何もできないままに出番を終えた。

 森保監督は、ワールドカップ本大会でのベスト8進出を目標に掲げている。それを達成するためには、グループリーグ3試合を戦ったのちに、4試合目に勝利しなければならないということである。当然、そのための選手層の厚さが不可欠になる。

 しかも、今回は過去の大会と比べ、出場決定から本大会までの期間が短く、こなせるテストマッチの数も多くない。だとすれば、イチから選手を競争させてチームを大きく変えていくことは難しく、現在の主力組をベースに、戦力として計算できる選手をどれだけ増やせるかが、現実的な強化策となるはずである。

 それを考えれば、ワールドカップ本大会へ向けた第一歩だったはずのベトナム戦は、あまりにも実りがなかった。貴重な1試合を無為に消費してしまった印象は強い。

「誰が出ても相手にスキを突かれないように、やろうとすることをスムーズに発揮する。(そのために)選手の層を底上げし、幅を広げなければ」

 指揮官の言葉が虚しく響いた。

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