サッカー日本代表の豪州戦で攻守、采配の課題を検証。W杯本番では突かれることばかり (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

多くのチャンスを作り、いかに仕留めるか

 この試合のオーストラリアの守備は、2トップが日本の2人のCBにプレスをかける教科書どおりのやり方だったが、遠藤航を中心とする日本の中盤3人が巧みにポジションをとってボールの出口を作ったこともあり、前からのプレスははまらなかった。また、アーノルド監督の隔離措置の影響もあったのかもしれないが、特筆すべき日本対策も見当たらなかった。

 こうなると、迷いが生じるのはオーストラリアの若いボランチコンビだ。特に田中碧と守田英正の立ち位置に振り回されると、お互いの距離が遠くなって中盤のあちらこちらにスペースが生まれた。

 中盤中央のフィルターが早々に崩壊したのは、日本にとっては好材料。間延びした中盤を通り、複数ルートから容易にアタッキングサードに前進して、多くのゴールチャンスを構築することができた。

 日本が作った前半の決定機は3回で、いずれもサイドをえぐってからのマイナスクロスが効果を示した。28分に右ポケットに進入した田中のクロスから南野拓実がDFを振りきってシュートしたシーン、32分に伊東純也のクロスを南野がヘディングシュートしたシーン、37分にゴール前までドリブルで前進した長友佑都の高速クロスを南野が合わせたシーンだ。

 28分のシュートは枠を外れたが、32分と37分は惜しくもバーを直撃したシュートだった。アンラッキーだったとも言えるが、4-3-3への布陣変更後の得点力低下傾向はいまに始まった現象ではない。より多くのチャンスを作って、いかにして仕留めるかは、高いレベルの相手と対戦する本大会までに改善すべきポイントとして挙げられる。

 また、この試合では浅野拓磨が1トップを務めたことも、中盤が間延びした状態を助長する要因のひとつになっていた。スピードが武器の浅野はポストプレーよりも裏抜けを得意とするため、その特長を生かすべく日本は相手DFラインの背後を狙ったパスを多用したからだ。

 自陣から供給したロングフィードは前半だけで計8本もあり、そのうち6本が浅野をターゲットにしたものだった(オフサイドになった1本含む)。これは大迫起用時には見られなかったデータであり、攻撃バリエーションを増やしたとも言えるが、それによる守備面の弊害も新たに発生した。

「(日本の左サイドを)相手が狙ってきている感じはありました。何本かそこで起点を作られて、相手も意図的に狙ってきたかたちになったと思う」

 これは、試合後のオンライン会見における吉田麻也のコメントだが、実際、前半30分以降にオーストラリアがパス1本によって日本の左サイド、つまり高い位置をとる長友の背後のスペースを起点にチャンスを5回も作っていた。

 特に35分に3番が放ったシュートを15番がフリックで狙ったシュートシーン、40分に右サイドから10番が供給したクロスをフリーの15番がヘッドで放ったシュートシーンは、いずれも10番が右サイドで起点になってから始まった、ゴールが決まっていても不思議ではないシーンだった。

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