三笘薫の活躍は森保一監督の采配的中と呼べるものなのか。W杯へ向けた日本代表の課題

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 オーストラリアが加盟先をオセアニアからアジアに移してから、およそ15年経つが、その間、戦力は低下の一途を辿っている。ジーコジャパンに3-1で勝利した2006年ドイツW杯当時のオーストラリア代表と、現在を比較すれば一目瞭然。2000-01シーズンのチャンピオンズリーグでベスト4入りしたリーズの看板FWマーク・ビドゥカ、ハリー・キューウェルを筆頭に、ブレット・エマートン、マーク・ブレシアーノ、ティム・ケーヒルなど、欧州の有名クラブでプレーする好選手がずらりと名を連ねたかつてが懐かしく感じられる。

 当時と同等のチームに、アウェーで0-2の勝利を収めたのなら拍手喝采を送りたくなる。W杯本大会でも躍進が期待できる。ベスト8が狙えるかもしれないと浮かれたくなるだろうが、今回の0-2ではそうはいかない。胸をなで下ろす程度にとどめておくほうが賢明だ。

 交代出場した三笘薫が2ゴール。これを、采配が的中したと森保一監督の手柄にすることに筆者はまるで同意できない。逆になぜ、後半39分までベンチに座らせておいたのかと突っ込みたくなる。それこそが、終盤まで0-0で推移することになった苦戦の原因だと指摘したい。

オーストラリア戦で2得点を挙げ、勝利の立役者となった三笘薫オーストラリア戦で2得点を挙げ、勝利の立役者となった三笘薫この記事に関連する写真を見る 故障欠場の大迫勇也に代わり、1トップに抜擢されたのは浅野拓磨だった。ポストプレーを得意にする大迫に対し、浅野はスピード系だ。100メートルを10秒台で走りそうな俊足はしかし、その隣にもいた。伊東純也である。

 浅野(1トップ)、伊東(右ウイング)。この2人が高速系であるのに対し、左ウイングの南野拓実は、定位置に構えている時間が極めて少ない、トップ下志向が強い中盤系だ。

 その3トップは実際には2トップだった。左はなし。攻撃のベクトルは3方向に伸びていなかった。日本の攻撃の終わり方は、すなわち真ん中か右だった。絶対的な幅に欠けていた。

 浅野はスピード系なので、大迫に比べてボールを失いやすい。相手に脅威を与えることもできるが、チームとして結果的に、真ん中で奪われるシーンが多くなった。それはサイドで奪われる瞬間より、逆モーションになりやすい。全体の流れが入れ替わりやすいのだ。

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