J開幕前夜の劇的な日本代表の一戦。福田正博は自身のベストゲームにチョイス「あの時がピークだった」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Etsuo Hara/Getty Images

 1勝2分けで辛うじて勝ち進んだ準決勝の中国戦もまた、ひと筋縄ではいかないシーソーゲームとなった。日本は決して完勝を収めたわけではなく、一時は勝利の女神にソッポを向かれかけてもいる。

 しかしそれこそが、福田がこの試合をベストゲームに選ぶもうひとつの理由、「試合展開が非常にドラマチックだった」ことにつながっている。

 準決勝はいきなり、まさかの展開でスタートした。

 開始からわずか30秒あまり。先制したのは、中国だった。

「『序盤は気をつけろ』って言われていたなかで先制されて、嫌な流れだなとは思いました」

 だが、中国には前述のダイナスティカップでも2-0と勝利していたうえ、「その試合で、僕はオフト(が監督)になってからの代表で(自身の)初ゴールも決めているんです」と福田。

「だから、僕自身は中国に対して、そこまで強さを感じていなかったんですよね。『やれるな』っていう雰囲気が、僕のなかにはありました」

 その言葉どおり、0-1で折り返した後半早々の48分、福田は左CKをきれいに頭で合わせ、同点ゴールを叩き込んだ。

 さらに日本は、57分にも高木琢也のヘディングによるフリックから、北澤豪がDFラインの背後へ抜け出し、追加点。たちまち逆転に成功した。

「みんなが前向きになれていたし、自信を深めていた。その自信を持たせてくれたのは、オフトだったと思うんです。選手たちに揺らぎや迷いがないから、選手が持っているその自信が、相手に対してはプレッシャーになっていたのかなと思います」

 だが、試合はこのままでは終わらなかった。それどころか、むしろここから混迷の度合いを深めていく。

 60分、自陣ゴール前での競り合いで、GKの松永成立が相手選手を蹴ってしまい、レッドカードで退場に。しかも、ひとり少なくなった日本は、中盤の北澤を下げ、控えGKの前川和也を投入するのだが、70分、その前川が何でもないクロスを後逸したところを押し込まれ、2-2の同点に追いつかれてしまうのである。

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