パリ五輪世代「大岩ジャパン」に集まった楽しみな素材。3月の初陣ではレアル中井卓大など海外組の招集も (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

秘める潜在能力が垣間見えた

 昨年の東京五輪メンバーを振り返っても、DF冨安健洋を筆頭に五輪出場時点でA代表経験を持つ選手が少なくなかった。その流れをさらに加速させ、2年後につなげようというわけだ。

 今回のキャンプに参加した選手のなかでも、MF鈴木唯人(清水エスパルス)は今年1月のA代表キャンプに初招集され、「国内組だけだったが、トップレベルの選手がいるなかでいろんな刺激を受けた。プラスになることが多かった」と振り返っている。

 こうした選手が現れてきたことは、ほかの選手に与える影響も小さくない。

 練習試合ではキャプテンを任されたMF藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)は「(荒木)遼太郎、(鈴木)唯人、西尾(隆矢)がA代表に選ばれているのを見て、すごく悔しかった」と本音を漏らし、「A代表で試合に出ながら、"助っ人"という形で五輪に出るのが一番いい」と、目標を見定める。

 もちろん、藤田の言葉を借りるまでもなく、21歳以下の選手たちはまだまだ成長途上だけに、これからチーム内の"序列"は大きく変わっていくだろう。

 たとえば、MF山本理仁(東京ヴェルディ)とMF甲田英將(名古屋)というふたりのレフティ。ふたりはともに、キャンプ最終日に行なわれた横浜F・マリノスとの練習試合(5−1で勝利)で出色の働きを見せていたが、いずれも同世代のトップランナーとは言いがたい。

 山本はJ2クラブ所属。甲田にしてもJ1クラブに所属しているとはいえ、ようやく公式戦に出始めたばかりだ。自らの立場を理解する甲田は「チーム(名古屋)でもしっかりアピールしないと、この先さらなる上に行けない。スタメンを勝ち取らないと、パリ五輪出場はない」と語る。

 だが、彼らのような選手が力をつけ、チーム内の序列を動かしていかなければ、チーム力は高まらない。

 過去の五輪世代を振り返っても、およそ2年の活動期間を経て、選手の顔ぶれは間違いなく入れ替わる。言い換えれば、山本や甲田のような選手が今後どれだけ伸びてくるか。勝負はそこにかかっていると言ってもいいだろう。

 それを考えれば、この世代には楽しみな素材が少なくない。ベストメンバーが集められなかったからこそ、このチームが秘める潜在能力が垣間見えた、とも言えるのではないだろうか。

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