アンリを止めた坪井慶介の日本代表ベストゲーム。「でも、ず~っと引っかかっていた」ことがある (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO

 だが、それ以上に強かったのが、「ワクワクするというか、代表デビューしたばかりの僕が世界のトップとやって、どれだけ通用するのか、試してみたい」という思いだった。

「かなり押し込まれて、耐えて、耐えて、っていう時間が、もしかしたらあるかもしれない。試合前は、そういう心の準備もしていましたが、そうなったら、(DFである)自分たちの見せ場だ、とも考えていました」

 そんな坪井を唯一残念がらせたのは、「僕の好きな(リリアン・)テュラムと(マルセル・)デサイーが出なかったこと」。グループリーグ初戦から中1日という強行日程だったことが影響し、フランスが主力の何人かを休ませたからだった。

 しかし坪井自身は、といえば「気分の高まりがかなり強かったので、疲れはあまり感じていませんでした」。

 実際、試合が始まると、体はよく動いた。

「いわば、日本は格下ではあったので、フランスがメンタル的に、どの程度本気で臨んでいるかはわからなかったとはいえ、戦えない印象はなかったです。立ち上がりはちょっとバタバタしたなっていう気はしましたが、日本の中盤には力のある選手たちが多かったので、そこでボールがしっかり収まれば、自分たちも十分に戦える。そういう感じはありました」

 互角以上の戦いを見せる日本は、前半43分、坪井が「何がファールだったのか、わからなかった」と振り返る不運なPKでフランスに先制を許しはしたが、後半59分、中村俊輔がFKを直接決め、同点に追いついた。

「僕、ちょうど真後ろくらいから(FKを)見ていたんですけど......、いや、あれはホント、震えましたね」

 ゴール正面からやや左寄り、距離にして25m以上のFKである。直接決めるのは難しい位置かと思われたが、中村の左足から放たれたFKは鋭く曲がりながらファーサイドのゴールポストを叩くと、そのままゴールに吸い込まれた。

「あのFKで、フランスに傾きかねなかった流れがガラッと変わりましたよね。タカ(高原直泰)のクロスからヒデさん(中田英寿のボレーシュート)っていうのもあったし、シュンさん(中村)の右足(のシュート)もあったし。結構、シュートシーンを作り出していましたから」

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