宇津木瑠美「なんでそんなつまらなそうにサッカーしてるの?」。11年ぶりの日本復帰で若い世代に伝えたいこと (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・撮影 text&photo by Hayakusa Noriko

改めて自分と向き合う

「"引退"を宣言するのって、アスリートとしてのケジメだと思っていたんです。でも、こういう状況になってそんな簡単なものじゃないんだと知りました。ふと、"サッカー選手である宇津木瑠美"に宇津木瑠美というひとりの人間がちゃんと『お疲れ様、よくやったね』って言えるかな?って思ったんです。

 そう考えたら、私はお疲れ様って言ってあげられなかった。ずーっと走ってきてくれたのに、ありがとうって自分で自分に言えないなんて......じゃあやるしかない!という結論に至りました」

 ケガも多かった分、身体を動かさなければどれだけ体力が劣っていくかは理解していたはずだ。その上で復帰の決断を選んだところに、彼女らしい潔さを感じる。いつもの宇津木だ。

「動けないだろうし、これでサッカー選手って恥ずかしいと思う。世界を獲ったのにそんなレベル?って思われるだろうし。だけど、そのみっともなさも出していいんじゃないの?って思いました。だって、このまま引退してもどこか置きにいってる感じが拭えないですもん。カッコつけたって自己満足できない。必死になれない人間になるほうがカッコ悪いと思う。だって、私はそうやってきたんだから」

 とはいえ、復帰の道のりは想像を絶するものだった。走ることすらままならない。周りは一回り若い世代の選手たちも多い。しかも、宇津木の場合、もともとが日本でプレーすることが自分に合わないと悩んだ末に選んだ海外移籍だったため、今の日本で対応できるのか。経験を積んで11年ぶりに戻ってきた日本だ。

「確実に浮いてますね(笑)。そしてめちゃくちゃしんどい!代表活動がない生活を13歳以降したことがなかったから、ホントに子どものとき以来。純粋にサッカーを楽しむことを34歳になろうとする今やっています(笑)」

 1から、いやおそらくマイナスからの立て直しだ。それでも若い選手たちとのコミュニケーションは積極的に取っている。

「もう、自分でわかるほどサッカーがヘタクソになっていて(笑)。何にもできないんですよ。それでも毎日練習に行くし、ああでもないこうでもないって口も出します。もう、目は肥えちゃってるから(笑)。甘えさせてもらっていることも重々承知で、こんな人間がひとり入って、どうこうなるチームではないと思うし、力を出し切ることで何か表現できたらいいと思っています」

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