日本代表は伊東純也と一蓮托生か。サウジ戦勝利も根本的問題は変わらず (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

【行き止まり感が漂う選手起用】

 伊東のマイナスの折り返しは、もはや森保ジャパンのお家芸だと言える。この日はその伊東の動きを、酒井が下支えしていた。伊東個人の魅力に加え、右SBと右ウイングの関係性も深まった印象だ。

 2点目のゴールには、長友佑都の小兵らしい味が絡んでいた。抜け目ない動きから引っかけるように蹴った浅い折り返しを、伊東が胸でワントラップ。その右足のインステップが炸裂したのは、次の瞬間だった。

 後半18分(ベトナム戦)、17分(オマーン戦)、13分(中国戦)と、交代でベンチに下がる時間が、直近3試合で試合ごとに早まっていた長友。このサウジアラビア戦では、先発が危ぶまれていた。

 左SBで先発を飾るのは長友か中山雄太か。前日、そのあたりを問われた森保監督は「中国戦をベースに」と答えていたので、長友の先発は6割と読んだ。森保監督が長友をスタメンで起用したことにはさほど驚きはなかったが、他のメンバーもすべて中国戦と全く同じだったことを知った瞬間には、さすがに溜息が出た。ベースに......と言われれば、多少は変わる可能性があると考えるのが自然だが、森保監督は全く変えなかった。

 まるで同意できない采配である。この監督は、段階というものを踏む気がない。常に行き止まり感漂う采配を振る。トーナメント戦の最後の、決勝戦を戦っているような起用法だ。W杯本大会に出場したらどうするつもりなのか。どのようにメンバーをいじりながらベスト8を目指すのか。

 これはすでに東京五輪で露呈した問題でもある。会見でそこのところを問われた森保監督は「次を見越してやることはできない。日本が世界の中で勝っていくためには1試合1試合、フルで戦いながら次に向かうことが現実的」と述べているが、この気質に変化が生じない限り、こちらは「本大会は別の監督で」と言い続けるしかない。

 サウジアラビア戦。森保監督は交代枠を4人しか使わなかった。2-0から逆転される可能性は、後半35分を過ぎた段階で5%もなかった。次はオーストラリア戦である。オーストラリアは日本がサウジアラビアに2-0で勝利したその数時間後、オマーンとのアウェー戦を2-2で終えた。これで日本とオーストラリアの勝ち点差は3に。日本にとって嬉しい知らせだが、得失点差(オーストラリアが勝る)を考えれば、突破の条件には大きな変化がない。次戦は負けられない戦いになる。

 2点差で終盤を迎えた絶好の展開にもかかわらず、森保監督は可能性を最大限追求する姿勢を怠った。よほどの怖がり屋なのか。控えの選手を信用していないのか。この姿勢をひとつ見ても、代表監督としての資質に欠けることが判明する。

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