ロシアW杯は直前の監督交代が奏功。あの時、なぜハリル解任を強硬に主張したのか (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

【「だから日本サッカーはダメなんだ」】

 とはいえハリルジャパンは、W杯アジア最終予選において、初戦でUAEに不覚をとったものの、無事首位通過を果たす。成績面では合格ラインを維持した。強豪と対戦する機会が激減したことも、成績面をあと押しした。親善試合といえば、弱者と戦うホーム戦と相場は決まっていた。アウェーの親善試合に至っては、2017年11月にブラジルとリールで、ベルギーとブルージュで対戦するまで、2年間試合なしという異常さだった。当然、「解任すべし」の声はファンやメディアの間で高まらずにいた。

 その結果だろうか、ハリルホジッチは会見場などで強気を装った。居丈高な態度で、「日本サッカーはだからダメなんだ」的な演説を、質問者への回答のなかに遠慮なくぶち込んだため、会見は独演会のような状態に陥った。

 ある程度なら仕方がない。サッカー先進国からやってきた指導者の愛情表現だと割りきることもできるが、質問とは無関係のダメ出しを容赦なく繰り広げるハリルホジッチの演説は、聞くに堪えないレベルに達していた。会見場で、その傍らに座る西野朗技術委員長の困り果てたような表情は、いまなお脳裏に鮮明だ。

 2017年11月。ハリルジャパンは初めて欧州遠征を行ない、ブラジル、ベルギーと対戦した。前半を0-3で折り返したブラジル戦。後半、槙野智章のゴールで1点を返し、1-3で試合を終えると、ハリルホジッチはこう言って胸を張った。

「もし前半を0-0で折り返していれば、日本は1-0で勝っていた」

 信頼感を失うようなひと言を、シャレを効かせることもなく居丈高に口にする感性には閉口するばかりだった。前半を3-0で折り返したブラジルが後半は手を抜いたのが、正解であることは言わずもがなだ。

 続くベルギー戦も同様だった。ベルギーは1-0でリードすると、展開にこだわるしゃれたサッカーに出た。日本が健闘したというよりも、ベルギーが省エネサッカーをしたという印象だった。

 ブラジル戦、ベルギー戦でハリルホジッチは、ともに5枚の交代カードを切った。しかしそのすべてが、同じポジション同士の選手を入れ替える非戦術的交代だった。ベンチに下げる選手と異なるポジションの選手をピッチに投入する戦術的交代は、2試合で計10回の交代機で1度も行なわれなかった。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る