加地亮がサッカー人生で一番悔いが残るW杯。「前線と後ろの人でバラつきがあった」 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Hitoshi Mochizuki/AFLO

 ジーコ監督が加地に送ったアドバイスは、「人をよく見てクロスを上げろ」。だいたいの場所へアバウトに上げるのではなく、「誰がどこにいるのかをしっかり把握して、そこへパスを出すんだ」ということだった。

「クロスはパス。そのイメージが頭に入ったことで、体の力が少し抜けたんですよね。それまではバタバタと攻め上がって、そのままの勢いでバーンとクロスを上げちゃおうとしていたので、どうしても力みがあってボールの精度も低かった。でも、中をしっかり見なければいけないと意識することで、クロスを上げる前に一瞬余裕ができるんです。

 ピンポイントで合わせるためには、どのくらいの距離を出さなきゃいけないのか。どのくらいの曲がりを出さなきゃいけないのか。そう意識することで、細かい部分までフォームが調整される。その繊細さはすごく勉強になりました」

 と同時に、加地は日本代表でプレーするようになり、「メンタル的な部分でのタフさがついた」と振り返る。

「それまでJリーグでしかプレーしていなかったので、代表を行き来するようになって、精神的な大変さがありました。しかも、そのなかで高いパフォーマンスが求められるわけですからね」

 なかでも強く印象に残っているのは、ワールドカップ予選の厳しさだ。加地はしみじみと、「ホント、予選がキツかったんですよね」とこぼす。

「自分のよさを出さないといけないですけど、そこを殺さないといけない時もあるっていうジレンマがありつつ、でも、そういう(自分たちのよさを殺した)戦い方もできるっていうのは成長にもつながるし。試合の流れや対戦相手によってか、いろんな見方ができるようになったのかなとは思いますけどね」

 加地は現在行なわれている最終予選についても、「『いやー、苦しそう』っていうのが一番です」と、その感想を口にする。

「『この状況はしびれるやろな』っていうのはすごくわかります。当事者じゃないのに、自分も入り込んでしまうんで(苦笑)。

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