バスに3時間閉じ込められても「苦でもなかった」。福西崇史にとって最も印象深い大会とは?

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AP/AFLO

日本代表「私のベストゲーム」(5)
福西崇史編(後編)

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 福西崇史が大きな手応えがつかんだ、ワールドカップ直前のドイツ戦。しかし、皮肉なことに日本代表のチーム状態は、それをピークに下降線をたどっていくことになる。

「あのドイツ戦はかなり寒かったんですけど、ワールドカップ本番はむちゃくちゃ暑かったんです。その間の2週間はコンディションの持っていき方が本当に大変でした。

 あとは、体ももちろんですけど、メンタルですよね。やっぱり、マルタ戦でちょっと"ギクシャク感"が出てしまったと思いますし、マッチメイクの難しさを感じさせられました」

 福西が言うマルタ戦とは、ドイツ戦の5日後に行なわれた、本番前最後の親善試合のことだ。

 ワールドカップに臨むにあたり、まずは世界トップレベルのドイツと戦い、いろんな意味での負荷を一度高め、その後に力の落ちるマルタと対戦し、最終仕上げを行なう。この試合には、そんな意味があったはずである。

「そのためにマッチメイクしたんだと思います。でも、ドイツ戦でやりたいことがある程度できたことで、ちょっとホッとした部分があったのかもしれない。

 それに、はじめはドイツ戦に出ていなかった選手を(マルタ戦に)使うという感じだったのが、ドイツ戦に出ていたメンバーが結構出ることになって、そこに疲れがあったり、あとは(ドイツ戦の)サブの選手たちも(マルタ戦出場の)チャンスがなくなって気持ちが離れたり......。本番までの間に、そういう部分がもしかしたらあったのかもしれません」

 そんな「ギクシャク感」を決定的なものにしたのが、6月12日のワールドカップ初戦。オーストラリアに喫した痛恨の敗戦だった。

 日本は前半に1点を先制しながら、試合終盤に3点を失い、1-3で逆転負け。その後は立て直しが利かないまま、クロアチアとは0-0の引き分け、ブラジルには1-4の完敗を喫し、1勝もできずにドイツを去ることになった。

「もしオーストラリア戦で何とか持ちこたえて結果を出せていたら、ある程度は乗り越えられたと思いますけど......。あの(オーストラリア戦の逆転負けの)ショックで、余計に(雰囲気が)下がってしまった。

 あの時のオーストラリア戦の悔しさは、一生残ると思います」

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