福西崇史が選んだ日本代表ベストゲーム。「強豪ドイツが焦っているのを見て楽しくプレーできた」 (3ページ目)
日本が互角以上の戦いを見せた前半は0-0。上々の45分だった。
「ある程度ボールを保持できるから、サイドバックも高い位置をとれるし、プレスも自分たちのやってきた形ができていました。ただ、点はとれていなかったので、どうやって点をとろうかっていうことで......」
キーマンとなったのは、当時ハンブルガーSVに所属していた高原直泰だった。
ドイツ・ブンデスリーガでプレーし、すでに4シーズン目を終えていた高原は、ドイツ代表の特徴についても、よく理解していた。
「高原は、『(センターバックのペア・)メルテザッカーの足元が弱いから、そっちへボールを持っていこう』と進言していました。そのためには、どうボールを動かそうとか、そういうコミュニケーションはすごくとれていました」
はたして、その高原が先制ゴールを決める。
57分、柳沢敦からのパスでDFラインの背後に抜け出した高原は、豪快で力強いシュートを、それでいて冷静に相手GKの位置を見極め、ゴールネットに突き刺した。
「高原自身もそこで点をとると自信になるし、やっぱりとるべき人がとって、かなり勢いづきましたよね。
あの時、高原はドイツでプレーしていたので、ドイツ側も注目......かどうかはわからないですけど(苦笑)、気にはしていた。僕らは誰が点をとっても喜ぶんですけど、僕自身は高原が点をとったことで、より勢いが出るんじゃないかとは思っていました」
その予感どおり、日本は65分に追加点。ゴールを決めたのは、またしても高原だった。
「今も残る僕の記憶では、ドイツが焦っているなっていうのは感じていました。もちろん、個々の能力ではやっぱり相手が上ですし、ギアの上げ方っていうのはすごく勉強になりますから、油断することなく、そこで自分たちがどういう戦い方ができるかを必死に考えてはいましたよね。
ただあの時、気持ち的に優位に立てているなって思ったことは覚えています」
思えば、0-3で完敗した1年半前は、「ドイツは余裕でやっていましたよね。別の言い方をするなら、遊んでいました」。
だが、この試合では一転、「ドイツにその余裕はなかったし、焦りが見えました」。裏を返せば、それだけ福西が余裕を持って戦えていたということでもあるのだろう。
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