なでしこジャパン、最後まで直らなかった悪癖。世界と戦うために精神論以外にもある問題点【2021人気記事】 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 決して選手たちの気が緩んでいた訳ではない。

「集中しろ」「ボールに行け」「ラインを上げろ」

 自覚があるからこそ、ピッチ上では様々な声が飛んでいた。にもかかわらず、やられてしまうというところに精神論ではない問題点がある。相手は100%日本の立ち上がりを狙ってくるのだから、具体的な対応策を持てなければ未来永劫苦しめられることになるだろう。

 そしてもうひとつ、高倉監督の最大の誤算は最も力を入れてきた"日本らしいパスサッカーで崩す攻撃"が鳴りをひそめてしまったことだ。当然のことながら相手はそのパスを出させまいとプレスをかけて出どころを潰していく。出せたとしても飛距離とスピードがない日本のパスでは、2手目、3手目で潰されてしまうことが多い。

 常に相手の逆を突き続けなければパスが通らないことを実感させられた。スウェーデンはそこを無駄に追わず、ある程度日本にポゼッションを"譲った"上で効果的に攻撃を潰していく手法を織り交ぜていた。暑い中では正しい省エネプレーだった。

 ただ、日本の攻撃がうまくいった場面もあった。得点した前半23分。最終ラインの熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)から右サイドの清水梨紗(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)へ、そしてその前へラインを取った長谷川唯(ACミラン)へとつなぐと、長谷川は相手DFラインの裏へボールを放り込む。

 田中美南(INAC神戸レオネッサ)がわずかにスウェーデンに走り勝って合わせた。小気味よく細かいパスを1タッチのプレーで崩してという理想的なものではないが、日本がオリンピックという舞台で強度を上げた一つの形だ。それぞれが少しずつ伸ばして磨かれたものが、最後に田中を競り勝たせるわずかな時間を生み出した。

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