駒野友一が日本代表ベストゲームに挙げた南アW杯のカメルーン戦。会心の勝利をもたらした闘莉王の言葉 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Jinten Sawada/AFLO

 前半に訪れた唯一の決定機を逃さなかったのは、本田圭佑だ。前半39分、フリーでクロスを受けると、左足で落ち着いてシュートを流し込んだ。日本ベンチ前には、駆け寄ってきた殊勲の背番号18を中心に、控えメンバーも含めた歓喜の輪が広がった。

「点をとれてすごくうれしかったのはもちろんですが、ああやってみんなで喜べたのは、チームがひとつになっていたからだと思います」

 先制後も、はやるカメルーンの機先を制するかのように、日本は落ち着いて試合を進めた。

「1点をとれたことで、自分たちには気持ちの余裕が出た。逆に相手には、絶対に焦りが出ていたと思います」

 慌てて攻撃に出るカメルーンを尻目に、日本を粛々と時間を進める。

「前半のうちに点をとったので、まだ45分以上時間があったし、その得点で浮かれることはなく、しっかりと気持ちを切り替えられた。守り切るというより、バトルで負けないことをみんなで徹底しました。日本のいいところって11人みんなで守れること。それが徹底してできていました」

 それでも、最後の5分間は押し込まれる時間が続き、カメルーンのミドルシュートがバーを叩くこともあった。

 しかし、意外にも駒野は「不安はなかった」と述懐する。

「どうしても相手は点をとりたいので、前に人数をかけてくるし、日本は押し込まれる時間が多くなる。そのなかでは1、2本、決定的なシュートもあると思いますけど、それでも最後まで守りきれたというのは、自分たちのほうが気持ちで勝っていたからなのかなと思っています」

 そして、ロスタイムの4分が経過し、ついに試合終了のホイッスル。日本が1-0でカメルーンを振り切った。

「サッカー選手である以上、ワールドカップというのは特別な試合ですし、そこで勝てたことはいつも以上にうれしい勝利でした」

 駒野が初めて味わう世界大会での初戦勝利は、同時に、日本が4回目のワールドカップ出場にして、初めて手にする初戦勝利でもあった。

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