駒野友一が日本代表ベストゲームに挙げた南アW杯のカメルーン戦。会心の勝利をもたらした闘莉王の言葉

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Jinten Sawada/AFLO

 オレたちは下手くそなんだから、下手くそなりのプレーをしなければ勝てないぞ。相手よりも走って、戦って、そういうプレーをしなければいけないんだ――。

「僕もその言葉は印象に残っていますし、みんなにも響いたと思います。そこで、自分たちは日本人らしいサッカーをしなければいけないんだと思い知らされ、みんなの気持ちもすっきりした感じがあったと思います」

 チームが勢いに乗るには、とにかく初戦が重要。そこで、結果を手にするための入念な準備が進められた。

「引き分けでもいい、ではなく、やっぱり(初戦で)勝利がなければ、決勝トーナメント進出は難しい。初戦に向けて、勝つことだけに焦点を合わせてやっていました」

 そして、迎えたカメルーン戦。晴れの舞台で、駒野は右サイドバックの先発メンバーに名を連ねた。

「(4年前に)ドイツのワールドカップに出ていた分、リラックスして試合に入れました。相手がアフリカ勢ということで、フィジカルで絶対に負けない。球際で競り勝つ。そういうところは明確にして、試合に臨めたと思います」

 試合は、序盤から動きのない展開で進んだ。試合後に岡田武史監督が「やり合うリズムになると、カメルーンは怖い」との分析を明かしたように、それは日本が望んだものでもあった。

 駒野も本来は精度の高いクロスを武器とする、攻撃が得意なサイドバックである。

「相手が前がかりになってきた時にはスキを突いて、カウンターで攻め上がったりっていうところは、考えながらやっていました」

 とはいえ、こう着状態が続けば、自然とプレーは慎重になる。「大会前にシステムを4-1-4-1というか、4-3-3の形に変えてからは、どちらかというと後ろ重心になることが多かった」と、駒野は当時の戦い方を振り返る。

 なかなか攻撃の糸口を見出せずに苦労はしたが、「攻撃する時間が短くなっても、チーム全体として、焦らずに試合を進めることができていました」。

 すると、後半勝負も辞さない覚悟だった日本に、千載一遇のチャンスが巡ってくる。

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