森保監督はなぜ大迫勇也に固執するのか。日本に得点を奪えるカードは揃っている

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

 アーリークロスに対する抜け出しではオフサイドの判定を受けたが、トラップから足を振る一連の動作は、生粋のストライカーのものだった。ひとつひとつの動きが、オマーンDFに動揺を生じさせ、決勝点には直接かかわっていないが、確実にラインを下げていた。

 古橋のストライカーとしての才覚は、神戸時代にチームメイトになったダビド・ビジャと似ている。前線ではどのポジションに入っても、圧倒的スピードと動き出しのよさでボールを呼び込み、ゴールも狙える。ビジャは生粋のストライカーながら、バルセロナでは左FWでチームプレーヤーとして働く一方、ゴールも量産していた。

 古橋も、どのポジションにいても役目を心得ている。オマーン戦でも、プレスバックで何度も味方を援護。リードした後は中盤まで下がってボールを受け、相手のチャージに体を入れてファウルをとってマイボールにしている。終盤には右サイドをひとりですり抜け、決定的なクロスを折り返して好機を作った。1トップでも2トップでも、サイドでも仕事ができるアタッカーだ。

 なぜ、彼が交代出場に甘んじているのか?

 何より古橋は"旬のストライカー"と言える。FWはバイオリズムが深く関係するポジションで、得点感覚が際立つ選手を中心にチームを組むのは定石である。サッカーはスコアを競うゲームであり、ストライカーは特別な存在だ。

 その点では横浜F・マリノスでJリーグ得点王を視野に入れる前田大然も、アウェー連戦でチャンスを与えられて然るべきだった。はっきり言って、うまい選手ではないし、大迫のようなポストワークは期待できないが、得点ポジションに入る強さを感じさせる。料理次第で、うまみが出る素材だろう。

 また、大迫と同じタイプの選手を求めるなら、鹿島アントラーズの上田綺世を抜擢するべきだった。ポストワークは大迫ほど洗練されていないが、「サッカーを知っている」というタイプのFWで、周りを生かし、生かされる。ボールを呼び込む動き出しは、Jリーグでもナンバー1で、ゴールが期待できる。身体が強く、足の振りも速いのでキックのインパクトも強烈だ。

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