森保ジャパンに攻撃コンセプト崩壊のデータ。FWへの縦パスが激減している (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 この試合で日本が記録した縦パスは、前半がわずか3本(成功1本)で、ボール支配率が上がった後半も5本のみ(成功3本)。しかも、成功4本のなかで敵陣深い位置、つまりアタッキングゾーンで記録したのは、田中碧が遠藤航からの縦パスを受けた前半23分のシーンだけだった。それ以外の3本は、いずれもレシーバーがミドルゾーンに下がって受けたものである(縦パスの受け手は南野拓実2回、大迫勇也1回)。

 ポストプレーありきの大迫を1トップで起用しながらこの状態では、中央に起点を作れないうえ、攻撃の縦の深みも作りづらい。これは、約3年間かけて積み上げてきた4-2-3-1では起こり得なかった低い数字であり、前回オーストラリア戦でも見られた現象だ。

 4-2-3-1と4-3-3の大きな違いは、前線に配置されるアタッカーの人数だ。さらに、この試合では相手のベトナムが5-3-2を採用していたため、相手が4バックだったオーストラリア戦以上に、縦パスを入れるのが難しい状況が生まれていた。

 ベトナムは、大迫には5バック中央の3番がつき、中央に絞ってくる南野に対しては2番、伊東純也には4番がそれぞれマーク。伊東が大外に立って幅をとる場合には、4番が空けたスペースを主に左ウイングバックの7番が埋めるなどして対応した。

 また、5バックの前には、日本の中盤と同数の3人のMFがパスコースを遮るため、南野や大迫は相手MFの前方まで下がってボールを受けるしかない。縦パスが少なく、受ける場所が低くなった主な原因はそこにあった。

 中央ルートを封じられた日本としては、両サイドのルートから攻めるしかない。それによって相手の守備網を広げられれば、少しは中央にスペースも空くはず。ところが、ベトナムが5バックだったことで、サイド攻撃も活性化できなかった。

 日本が前半に記録したクロスボールはわずか5本と、前回オーストラリア戦の10本から半減。後半は、63分の2枚代え(左SB長友佑都→中山雄太、左ウイング南野→浅野拓磨)以降に8本を記録して13本に増加したが、逆に成功数は前半の3本から1本に減少。

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