森保ジャパンのパスはどれくらいつながっているか。ボール支配率が明らかにする歴代日本代表の姿 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Sano Miki

 森保ジャパンは2019年1月に開催されたアジアカップでも、サウジアラビアに対し支配率で劣った。それも目を覆うばかりの一方的な展開で、である。支配率29%対71%。それでいながら、試合には1-0で勝利した。辛勝もいいところだった。これ以上、押された試合は簡単に思い出せない。

 データが残っていないのでなんとも言えないが、このような劣勢は、2001年にフランス(0-5)、スペイン(0-1)に敗れた時、以来ではないか。そうした意味では、45%対55%の関係だった先日のサウジアラビア戦は、2年10カ月前に行なわれたアジアカップの時より、まだましだったと言うべきか。

 支配率が上昇しやすいか、下降しやすいかは、サッカーが攻撃的か否かと関わりがある。自軍ゴール前に多く人を割けば、相手ボールを奪うまでに時間がかかる。奪う位置が低ければ、目指す相手ゴールは遠くなる。攻めきる前に奪われる可能性がある。高い位置でボールを奪おうとするプレッシングサッカーのほうが、後ろで守るサッカーより支配率が上がりやすいことは理屈的にも明白だ。
 
 それに加えて攻撃のルートが関係する。サイドを突くか、真ん中を突くかで、大きく変わる。四方からプレッシャーを浴びる真ん中より、片側からしか浴びないサイドのほうが、ボールは奪われにくい。

 高い位置でボールを奪い、サイドを突く。それに選手個人の技量が加わる。相手に奪われにくいボール操作能力ということになるが、それは順番的にはプレッシング、サイド攻撃に劣る。つまりボール支配率は、ボール操作術に特段、優れていなくても、戦い方次第で上昇させることができる。監督の色が出るポイントと言える。

 森保一監督は前戦のオーストラリア戦を、それまでの4-2-3-1ではなく4-3-3で戦っている。より攻撃的な布陣で戦ったわけだ。しかし、それでもオーストラリアに支配率で劣った。色を出すことができなかった。「プレッシング」「サイド攻撃」「各個人のボール操作能力」のなかで挙げるならば、問題点はサイド攻撃になる。

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