「なぜ前田大然を前線で使わない?」。森保監督は絶好調の飛び道具を日本代表でどう生かすのか (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 加えて、甘めの評価を示すと、相手GKがクロス処理を誤ったことで生まれた24分の小池のゴールも、ひとつ場面を巻き戻せば、左からのクロスを合わせようとした前田の姿が確認できるし、鮮やかなカウンターを発動させた86分の水沼のゴールも、前田が身体を張って小池につなげたことがきっかけだった。

 つまり、この日の全8得点に前田が関わっていたということになる。

 ハイパフォーマンスの要因は、センターフォワードとして使われたことが大きいだろう。今季は序盤戦こそ中央でプレーしていたものの、以降は左ウイングが主戦となっていた。久しぶりのCF起用に前田は「相手のラインが高めなので、どんどん裏に抜けていこうというのはあった」と振り返る。

 先制点の場面に象徴されるように、前田のスピードはやはり脅威だ。裏抜けを繰り返せば、相手はラインを下げざるを得ず、バイタルエリアにスペースが生まれる。その動きひとつでプランを崩されるのだから、相手にとって厄介なことこの上ない。

「前のほうがやりやすいというのはありますけど、そこはチームが決めること。与えられたポジションで結果を出せたのはよかった」と前田は殊勝に語るが、彼の起用法についてはケヴィン・マスカット監督も悩ましいところだろう。

「彼を前に置いたのは、裏への抜け出しや中央の突破ができる選手なので、そこに置くことでFC東京を苦しめられると思った」とその狙いを明かした一方、前田のベストポジションを問われると「難しい質問だが、彼はマルチなポジションができる選手のひとり。1トップもできるし、右でも、左でも、柔軟にプレーできる選手だと思う」と明言を避けている。

 実際に後半途中に左サイドに回ってからも、前田はハイパフォーマンスを保った。同サイドに移ってきた長友佑都にも臆することなく立ち向かい、サイドで起点を作りながら縦への推進力をもたらし、時に中央に侵入しては得点機に絡んでいった。

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