「怒りが収まらない」三都主アレサンドロ。今でも忘れられない日本代表の試合とは? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Press Association/AFLO

 日本は初戦で引き分けたあと2連勝して、W杯で初めてグループリーグを突破。それまで初戦のベルギー戦に途中出場しただけだった三都主は、もちろん試合に出たい気持ちを持ってはいたが、チームの勢いも感じていた。

「いい形で勝ち続けていたので、このタイミングではなかなか(メンバーを)変えないだろう、と思っていました」

 ところがトルコ戦を前に、日本代表を率いるフィリップ・トルシエ監督は意外な一手を打つ。突如先発メンバーを入れ替え、今大会初出場となる西澤明訓、同じく初先発となる三都主を2トップで起用したのである。

 指名を受けた三都主自身、「何を考えているんだろう」と驚く奇策。だが、「それ以上のうれしさがあった」のも確かだった。

「試合前のミーティングでいきなり言われて、まずはビックリしたのと同時に、『ラッキー!』みたいな(笑)。それまで、トルシエさんが僕をそのポジション(FW)で使うことはなかったので、『なんで?』とは思ったけれど、『期待してくれているんだから、ここで応えなきゃいけないな』と思いましたね」

 ようやく巡ってきた大舞台での先発出場に、気持ちは高ぶった。

「ワールドカップに、それも先発で出られる。そのチャンスがきたっていうのは、すごくうれしかった。トルシエさんは、フレッシュなふたりを入れたかったんだろうし、だからパワーのある西澤とスピードのある僕を選んだんじゃないのかな。とにかく期待に応えて結果を出したいっていう気持ちがすごく強かった」

 試合前から降り続いていた雨は、「ぶっちゃけ、僕はちょっと苦手」と三都主。「滑りやすいので、(ポイントの数が少ない)取り替え式のスパイクを履かないといけないし、ドリブルがちょっとズレると相手に(ボールを)とられちゃう」。しかし、そんな不安さえも、興奮が打ち消してくれた。

「ウォーミングアップの時から鳥肌が立つくらい、もうホントに気持ちよかった。やるしかない、という気持ちばかりでした」

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