日本代表の豪州戦の課題をスペインの慧眼が指摘。「前がかりになった罪」と評したプレーとは?

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 8分の先制点は、論理的アプローチの結実だろう。鋭いプレッシングから敵陣でボールを奪うと、南野が左サイドを素早く持ち上がり、ファーに流れた田中が受け、右足で流し込んだ。

 サウジアラビア戦について、私は前線からのプレッシング強度の弱さについて指摘したが、改善されていた」

 そう語るエチャリは、森保ジャパンの戦術面に及第点を与える一方、問題点も指摘した。

「日本は、伊東、田中を筆頭に前線からの守備が充実していた。結果として、ソリッドな戦いになった。全体的に前がかりになった攻守が、功を奏していたのだ。

 しかし前半41分、課題とすべきシーンがあった。

 バックラインから左サイド高い位置にいた長友にロングボールが蹴り込まれる。これがあっさり相手右サイドバックにクリアされ、長友の背後にいた選手につながった。これに対し、冨安健洋がスライドでカバーに入ろうとしたが、距離が離れていたことで躊躇した。その一瞬、背後にパスが出され、ポジション的、数的不利で持ち込まれている。

 失点しなかったのはGK権田修一の好セーブのおかげで、僥倖と言える。
 
 対面する敵への寄せは、相手がボールを持つ体勢や他の味方のポジションで、その都度、決まるものだ。この場面、冨安はチームのやり方を順守したのだろうが、危険を冒すべきではなかった。長友のポジションも冨安のトライも、前がかりになった罪だ」

 そしてエチャリは、このピンチが後半25分の同点劇への伏線だったと説明した。

「日本は引き続きプレッシングからリズムを作っていたが、同点にされた場面では裏目に出ることになった。

 左サイドでボールを持たれた時、長友が、敵陣にもかかわらず、前を塞ぎに走った。南野がセンターバックを、守田がアンカーを封じた集団的プレスだとしても、タイミングが完全に遅れていた。そして背後にボールを出され、カバーはいなかった。

 冨安はスライドしてカバーするには距離が離れすぎ、マーカーも捨てなければならい。前半のピンチも思い浮かんだに違いない。結局、遠藤がカバーに行くが、間に合わなかった。マイナスのクロスに対して守田がタックルし、一度はPK判定がVARで覆るも、FKを叩き込また。

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