日本代表のサウジアラビア戦は苦戦必至。100の力を100出せない理由

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JFA

 そもそも外国人の数が少ない。出稼ぎに来ている労働者を見かけないし、観光業に依存していないので、外国人が楽しめそうな場所、高揚感を掻き立てるような場所が著しく少ない。なにより街並みに色味が乏しく、華やいだ雰囲気がない。一方でスタジアム周辺はかなり男臭く、暑苦しいムードに包まれている。このなかで日本人が精神的なノリを維持し、100の力を100出すことは簡単ではない。

 ちなみに、サウジアラビアの国土面積は日本の約5.7倍ある。秋田県ほどしかないカタール、北海道とほぼ同じ面積のUAE、四国とほぼ同じ面積のクウェートなどと比較すれば、その広大さはイメージできるだろう。ライバルはペルシャ湾を挟んだ反対側に位置するイラン(日本の国土面積の4.4倍)だ。

 そのイランのサッカー選手と言えば、かつて、バイエルンやヘルタ・ベルリンでプレーしたアリ・ダエイを真っ先に想起するが、サウジアラビアの選手でこれに対抗する選手と言えば、サイード・オワイランになる。1994年アメリカW杯対ベルギー戦で、1986年メキシコW杯対アルゼンチン戦でディエゴ・マラドーナがマークした60メートル5人抜きシュートを5メートルほど超える、65メートル5人抜きシュートを決めた左利きのアタッカーだ。

 サウジアラビアは、日本が出場を逃したこのアメリカW杯でベスト16に進出した。ドーハで行なわれたアジア最終予選の初戦で、日本が引き分けた(0-0)相手だっただけに、ロバート・F・ケネディ・メモリアルスタジアム(ワシントン)でその瞬間をじかに目撃した時、サウジアラビアとオワイランを、より眩しい存在に感じた。

 対サウジアラビアの戦績を、冒頭で13戦して8勝1分4敗と記したが、日本国内で戦った試合に限れば5戦5勝だ。その5戦はすべて観戦しているが、それらの試合を通して、サウジアラビアが強そうに見えたことは1度もない。地球の自転方向に進むと、時差ボケがより辛くなると言われるが、サウジアラビアが日本でからっきし弱い理由は、それだろうか。

 サウジアラビアで行なわれたアウェー戦は、日本の2戦2敗だ。10月7日に行なわれる一戦は、データ的には苦戦必至の試合と言うべきだろう。

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