サッカー日本代表の「サウジアラビア戦を観る権利」とは? 世界は母国のW杯予選をどう視聴しているか

  • 利根川晶子●文 text by Tonegawa Akiko
  • photo by KYODO

 この「クラウン・ジュエル」リストにはAとBの2つのカテゴリーがある。カテゴリーA は無料放送チャンネルでの生中継を義務づけられている。オリンピック、サッカーW杯、ヨーロッパ選手権(ユーロ)、FAカップ決勝、競馬のダービー、テニスのウィンブルドン決勝、ラグビーW杯決勝などがこれにあたる。カテゴリーBは録画・ハイライトを無料で放送しなければいけないもので、クリケットのメジャー大会やゴルフの全英オープン、世界陸上などが含まれる(地上波で録画が放送され、有料放送が生中継ということはあり得る)。

 W杯のヨーロッパ予選はこの「クラウン・ジュエル」にこそ入らないが、その関心の高さは本大会にも劣らない。そのため代表戦はホーム、アウェーにかかわらずITVとITV HUB(無料ストリーミングサービス)で放送されている。ITVはイギリスで最も歴史のある民間放送局だ。ちなみに本大会は国営放送BBCとITVが2022年にまで共同で放送することで合意している。もちろんどちらも地上波のチャンネルである(BBCや日本のNHKなど公共放送の、いわゆる受信料をどう捉えるかについては、ここでは触れないことにする)。

 一方、イタリアでは1993年まで、サッカーのリーグ戦を生放送していなかった。スタジアムの観客動員数を守るためだ。そのため、試合結果を生で知るにはラジオの実況、もしくは画面にスコアの文字のみが出ているという、ちょっとありえないようなテレビ番組を見るしかなかった。

 そんなイタリアでも、代表戦だけは昔から中継を行なっていた。放送するのはずっと変わることなく国営放送のRai。イタリアもまた法律で、代表戦は無料の地上波で放送されることが義務づけられている。「国を代表するチームが戦うというのに、国民が自由に見ることができないのはおかしい」というのがその理由だ。

 セリエAやチャンオピオンズリーグなどの中継は、民間放送のメディアセットや有料のスカイスポーツ、DAZN、アマゾン・プレミアムなど、媒体が目まぐるしく変わるが、代表戦だけはRai一本。今回のW杯ヨーロッパ予選もRaiの地上波と無料ストリーミング放送のRaiPlayで見ることができる。

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