森保ジャパン、チーム戦術の崩壊。攻守に乱れたデータがはっきりと出た (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 結局、森保ジャパンのバロメーターとなる敵陣でのくさびの縦パスは、わずか9本のみ(前半5本、後半4本)。しかもそのなかで成功した(収められた)のは、後半28分に堂安律が中央の大迫に対して斜めから入れた1本しかなかった。

 もちろん、森保ジャパンが相手の縦パス封じに遭うのは初めてではなく、これまで何度か経験してきたこと。その場合、日本は両サイドからのクロス供給に攻撃の活路を見出してきたが、この試合では前半11本、後半10本と、クロス自体が過去のケースと比べて圧倒的に少ない本数に止まった。過去の例とは何が違っていたのか。

 オマーンが採用した4-3-1-2のデメリットは、両サイドにサイドバック(SB)しかいない点だ。中央を固めやすいが、中盤の両サイドにスペースが空くため、相手のSBの進入を許しやすく、サイドで数的不利の状況に陥りやすい。サイドに2人を配置する4-2-3-1を採用する日本としては、両サイドに幅をとればクロスを供給してゴールを狙うだけでなく、相手の守備網を左右に広げて中央にスペースを作ることもできる。

 アジア2次予選で戦った相手には、日本はその方法で攻略できた。日本がボールを失っても、即時回収して相手を敵陣に封じ込めたまま攻撃を継続できるため、時間的にもカウンターを受けるリスク的にも、両SBが高い位置をとる余裕があるからだ。

 しかし、オマーンのカウンターは鋭かった。奪ったボールを素早くフィードし、それを収めるだけの2トップもいた。2トップがボールを収めると、次にプレーメーカーの20番(トップ下)が前向きでボールを受けるため、日本は反撃の危険にさらされてしまう。実際、開始早々の前半13分に、そのかたちから11番にシュートまで持ち込まれた。

 しかもオマーンの布陣は、上下のみならず、左右のコンパクトさも保たれていたので、日本が攻撃の幅をとるためには誰かがオープンサイドにできる広大なスペースに立ち、孤立覚悟のポジションをとる必要があった。しかし、カウンターという武器を持つ相手に対し、SBがそのリスクを背負うにはハードルが高すぎる。リスク覚悟で強引に高い位置をとった時には、後述する守備の問題が発生している。

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