中澤佑二が語る日本代表。「フロンターレとマリノスの中からもっと選ばれてもいい」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by ロイター/アフロ

「チームには、能活(川口)さん、楢(楢崎正剛)さん、俊(中村俊輔)、ヤット(遠藤保仁)とか、自分がリスペクトする選手がたくさんいたので、特にキャプテンとして何かするということはなかったです。ただ、年上の選手として代表チームに対する姿勢は見せようと思っていました。若い選手は、年上の選手の振る舞いを見ているんですよ。そこで僕らがチームよりも個人の思いを優先してプレーすると、若い選手はそれでいいんだってとらえてしまう。だから負けてもポジティブな姿勢を崩さず、若い選手が変にプレッシャーを感じないように、伸び伸びとプレーできる環境を作ろうと思っていました」

 日本代表のキャプテンの言動は、常に注目される。

 歴代のキャプテンは試合前後、大勢のメディアに囲まれて対応をしていた。中澤さんがキャプテンになってからも試合後、ミックスゾーンの一角で長い時間、メディア対応をしていたのが印象的だった。

「メディアに発信する際に気をつけていたのは、チームの不平不満や選手について評価をしないことです。そこで自分が言ってしまうと、他の選手もいいんだって思うし、メディアを通じてそういうことを聞いてしまうのは、自分も嫌だし、そもそも気分がよくないじゃないですか。そういうところに気をつけていましたね。でも、メディアの人は、もっとズバッと言ってほしかったんだと思います。あの手この手で聞いてきましたけど、僕はまわりくどく、濁して、包んで確信にたどりつけない感じで話をしていました(笑)」

 南アフリカW杯最終予選は、ドイツW杯最終予選の時ほどの苦戦はなく、乗りきることができた。2試合を残して世界最速でW杯出場を決めるなど、チームとしての完成度は高かった。もっともチームが早くに一度ピークを迎えてしまったことで、その後は低調な状態が続き、W杯前はチームに対して厳しい声が飛んだ。

「ウズベキスタン戦でW杯出場を決めてからW杯本番までは長く感じました。その間、チームもうまくいかないことが増え、苦しみましたけど、その時に支えになったのがドイツW杯の経験です。ドイツではチームよりも個の思いが先にきて、レベルが高い選手が集まったいいチームだったのに勝てなかった。それを繰り返してはいけない。ドイツを経験していない選手は、複雑な思いを抱いていたと思うけど、僕らドイツ経験者は個よりもチーム、チームの勝利を優先ということでまとまっていた。それを若い選手も理解してくれたので、バラバラになりそうでも意外と選手は結束していました」

 岡田武史監督が大会前にシステムや選手を大幅に変更する事態にも選手は柔軟に対応して、初戦のカメルーン戦に勝ち、その後ベスト16まで進んでいった。

 森保一監督率いる日本代表は、来年のカタールW杯でベスト8を目標として掲げ、最終予選がスタートした。

 中澤さんは、森保監督の指導に首尾一貫したポリシーが見えると言う。

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