スペインの名指導者が日本代表のオマーン戦を斬る。「中盤は横パスばかり、サイドで幅も深みも作れていない」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

カタールW杯アジア最終予選特集

「日本にとっては、引き分けでも悪くない結果だっただろう。それだけ、この日のプレーは不調だった。少なくとも、これまで見てきた日本ではなかった」

 スペインの目利き、ミケル・エチャリはそう言って、本拠地でオマーンに0-1と敗れた日本代表を評している。10年以上、日本代表をスカウティングしてきたエチャリは、日本の戦いを冷静に分析した。

「コンディションの問題は大きく影響していただろう。東京五輪を戦った若手を使えなかったのは、疲労の蓄積を考慮したのではないだろうか。オーバーエイジでプレーした酒井宏樹、遠藤航はいつもの彼らではなかった。五輪を戦ったことで休養がなく、目に見えてプレーレベルが落ちている。いつもでは考えられないミスがあった」

 レアル・ソシエダ、エイバル、アラベスとスペインの有力クラブで強化部長や育成部長など、さまざまな役職を担ってきたエチャリは、丁寧に試合を振り返っている。

コンディションのせいか酒井宏樹のプレーも精彩を欠いたコンディションのせいか酒井宏樹のプレーも精彩を欠いたこの記事に関連する写真を見る「オマーンは4-4-2で、常にチャレンジ&カバーの態勢を作っていた。最終ラインは高さがコントロールされ、各ライン間は緊密。プレッシングとリトリートを両用し、戦術的な相互理解があった。たとえば、日本のサイドバックに対しては、サイドアタッカーが蓋をし、自由を与えていない。

 日本は4-2-3-1で、経験のある選手を揃えて挑んでいる。コンディション面で、五輪組は厳しかったのだろう。遠藤、酒井を含めて、その点で差を見せられなかったことが、苦戦の要因だ。

 しかし、オマーン戦ほど、日本がボールを失う試合があっただろうか。私には記憶がない。距離感も判断も悪く、プレーが各所でノッキングしていた。総合力で押し込む場面もあったものの、中盤は横パスばかりで創造性を感じさせず、サイドで幅も深みも作れなかった。

 おそらく、左で長友佑都、原口元気、鎌田大地が有利な形を作って、右で伊東純也が裏を取る、というのが、狙っていた得点パターンだろう。実際、その形は何度かあった。吉田麻也からのロングパスを伊東に通したシーンも、ゴールに近づいていた。しかしながら、どの攻撃も単発。いつものたたみ込むようなコンビネーションはなく、流れを作り出せなかった」

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