福田正博が考えるサッカー五輪代表の課題2つ。高校サッカーのある「姿勢」も取り入れてほしい

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by JMPA

 森保監督にとって誤算だったのは、三笘薫が万全の状態ではなかった点だろう。東京五輪代表メンバー発表後の6月末にあったAFCチャンピオンズリーグで故障。それでも間に合うと判断したが、三笘らしさを垣間見ることはできなかった。

 3位決定戦で途中出場してからのパフォーマンスは、Jリーグで見せてきた本来の姿だっただけに、なおさらそう思わせた。ただ、彼を先発起用しなかったり、それ以前の準決勝スペイン戦はベンチ外にしたのは、そう判断する理由があったからだろう。

 スペイン戦で延長突入のタイミングで堂安律と久保建英をベンチに下げたのも同じだが、サッカーには現場でしか判断できないことがある。監督やコーチはそのために長い年月をかけて手元に選手たちを置き、詳細に見てきてもいる。そこから培った判断を、1試合や2試合の結果だけで語ると、机上の空論になってしまう可能性がある。

 オリンピックのサッカーは、2週間ほどで6試合を行なう。中2日で次の試合に臨むなかでは、対戦相手を分析して、対策を選手に落とし込むのは不可能に近い。最優先すべきはコンディショニング。疲労が溜まっていて万全ではない選手たちに、あれこれ対策を指示したところで、選手たちを混乱させるだけになるからだ。

 それを理解して東京五輪U-24日本代表を振り返れば、選手たちもスタッフも総力をあげて短いインターバルの試合に向けて、しっかり準備をしたし、よくやったと思う。ただ「よく頑張った」で終わらせてもいけない。負けたことは真摯に受け止めて、次につなげていかなければならない。

 森保監督の下で構築した「いい守備から、いい攻撃」は通用したし、格上のメキシコやスペインとの戦いからは、足りない部分も見えてきた。この課題を今後のA代表や次回のパリ五輪世代はしっかりとクリアしていってもらいたい。そうすれば東京五輪では届かなかったメダルに必ず届くだろうし、W杯でのベスト8という目標にも到達するはずだ。

 メダルが獲れなかったのは残念だったが、東京五輪からは日本サッカーの成長が実感できた。サッカー界にとってはそれが最大の収穫だ。

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