福田正博が考えるサッカー五輪代表の課題2つ。高校サッカーのある「姿勢」も取り入れてほしい (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by JMPA

 東京五輪に限らず、国際大会ではトーナメントを勝ち進むほど、流れのなかからゴールを奪うのは難しくなる。強豪国同士の対戦はもちろんのこと、強豪国が格下と対戦しても守備を固める相手から得点を決めるのは容易くない。格下と言ってもグループリーグを突破した粘り強さがあるのだから当然だろう。そのためW杯では得点の大多数がセットプレーから生まれている。

 日本がこれからオリンピックやW杯で決勝トーナメントを勝ち上がっていくためには、やはりセットプレーのスペシャリストを育成すること。中村俊輔や本田圭佑、遠藤保仁のように、一発で試合の流れを変えられる選手が育った土壌はあるだけに、力を入れて取り組んでもらいたい。

 そうした優れたキッカーがすぐ現れればいいいが、そうでなければキックを合わせるほうのバリエーションを増やし、その精度を高めることが必須だ。CKやFKだけではなく、スローインからのリスタートも含めて、ゴールに迫るためのさまざまな工夫をしていかなければいけないと思う。

 日本では高校サッカーではリスタートやセットプレーに多くのアイデアをもって取り組んでいる。一発勝負のトーナメントを勝ち上がるために、細部にまで勝機を見出そうとするからだ。「高校生のようなロングスローを日本代表に取り入れろ」というのではない。この姿勢を取り入れてもらいたい。

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 森保一監督は五輪代表とA代表の監督を兼務するメリットを活かし、長い時間をかけて準備し、本番でもよく戦ったと思う。それだけにセットプレーに余白を残した点が残念でならなかった。

 東京五輪で手にした課題は、そのままA代表の課題でもある。日本代表も海外組がほとんどで、まとまった時間を設けてトレーニングはできない。そのなかでセットプレーのバリエーションを増やすには、国際Aマッチデーで招集するたびに意識的に取り組まなければならないだろう。W杯アジア最終予選の突破が前提になるが、ここからW杯本大会までは1年ある。短い時間の積み重ねでも、必ず大舞台で日本を助ける武器になるはずだ。

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