オーバーエイジ活用の難しさ。「史上最強」であることがマイナスに作用したのか? (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 だが、以降、遠藤の口からは頻繁に「若い選手が......」という言葉が聞かれるようになった。つまりは、自分の身を24歳以下の選手たちとは違う立場に置いた発言である。

 遠藤らしいリーダーシップや、OAとしての自覚がそうさせたのだろうが、必要以上に肩の力が入っているのではないか。そんな不安を覚えた。

 実際、初めてOAが加わった6月のガーナ戦後、吉田はこんなことを話している。

「プレッシャーはいつも以上にあった。完璧じゃないといけないプレッシャーが常にある。A代表でももちろんあるが、見られ方として、プレッシャーを感じる立場であるのは間違いない」

 自分はチームを引っ張る立場であり、周囲のミスをカバーすることはあっても、自分がミスすることなどあってはならない。大会中も、彼らにはそんな重圧がかかっていたのかもしれない。

 最後の3位決定戦で敗れたあとには、酒井が「若い選手のポジションを(OAが)3枠奪う形になったのに、9年前(ロンドン五輪)と同じ悔しさをこの世代に与えてしまった」と話している。彼らが、単なる22分の1、という意識でなかったことは明らかだ。

 当然、彼らの心意気は森保一監督にも伝わっていただろう。結果的に、指揮官は彼らを先発メンバーから外すことができなくなった。そこには、OAのプライドに対する配慮があったかもしれない。

 彼らが大きな重荷を背負った結果、遠藤、吉田が直接的な形で失点に絡み、3位決定戦に敗れたのは皮肉な結末だった。

 一方、日本とは対照的なOAの選手選考をしていたのは、銀メダルのスペインだ。

 今回、スペインにも3人のOAが加わっていたが、いずれも1996年生まれ。すなわち、東京五輪の出場資格1997年以降生まれの一個上の選手たちである。

 しかも、ダニ・セバージョスとミケル・メリーノに関しては、東京五輪ヨーロッパ最終予選を兼ねた、一昨年のU-21ヨーロッパ選手権に出場していた選手である。

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