吉田麻也の思いはチームメイトに届くか。53年ぶりのメダル獲得へ欠かせないもの (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 当時を知る吉田は、だからこそスペイン戦の敗戦直後、失意に満ちた円陣内で言葉に力を込めたという。

「ロンドンの時は3決で負けて、すごく悔しかった。ここで終わっちゃいけないぞ。もう一回踏ん張っていこう。そういう話をした」

 自分自身が同じ経験をしたくないのはもちろん、若いチームメイトたちにそれを味わわせたくなかったからだ。

「みんなの顔が......、マズイなと思ったんで」

 そう語り、「精神的な準備をしないといけない。その助けをしたいと思った」というキャプテンは、その後、選手ミーティングを開いた。ロンドン五輪の映像を見せることで落ち込む選手たちに刺激を与え、もう一度気持ちを奮い立たせようとしたのである。

「本当にみんなに伝わっているのかな、響いているのかなという不安がある」と苦笑する吉田。

 だが、DF旗手怜央曰く、「映像も見せてもらって、自分は経験していないが、選手の表情を見てメダルを獲れなかった悔しさが本当に表れていた。麻也さんが言ったことすべてが心に残っている」。それは、旗手だけの特別な感情ではなかったはずだ。

 ただし、金メダル獲得を目標として明確に掲げ、ここまで準備してきた臨戦過程を考えれば、ロンドン五輪の時以上に選手のショックが大きくても不思議はない。全員が完全に気持ちを切り替える作業は簡単ではないだろう。

 しかし、ロンドン五輪との決定的な違いもある。すなわち、経験だ。

 吉田が語る。

「自分と酒井(宏樹)選手というロンドンを経験した選手もいれば、スタッフもいる。自分たちが他の選手たちの雰囲気や気持ちを変えることができると信じているし、そこが一番の違いだと思っている」

 失意の状態にあることは、おそらく3位決定戦で対戦するメキシコも同じだろう。メキシコもまた、準決勝でPK戦の末にブラジルに敗れ、金メダルを目指す戦いは終わりを迎えた。そのショックは決して小さくないはずだ。MF遠藤航が語る。

「フィジカル的にしんどいのはわかっているし、それは相手も一緒。どちらかと言うと、メンタル的な部分の勝負になると思う。そこはしっかり頭の切り替えをしなければいけない」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る