U-24日本代表、準決勝での問題点。スペインとの差には縮められるところがある

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by JMPA

◆スペインの名指導者が推す東京五輪でカギを握る7人。「U-24世代では1、2を争う逸材」と絶賛した選手は?

 守備的MFの候補には、他に中山雄太と板倉滉がいた。しかし、この日2人は左サイドバックと、センターバックでそれぞれスタメン出場していた。冨安健洋も累積警告で出場停止だった。ベンチに控えはいなかった。田中と遠藤は、ボロボロになりながらよく頑張った。しかし、森保監督の采配ミスとして挙げたくなる点でもある。

 田中は延長後半13分、精も根も尽き果てたという様子でベンチに下がった。交代で入った選手は橋岡大樹で、基本的にはSBの選手だ。守備的MFの経験に乏しい選手だった。選手交代の話をするなら、この交代は5人目だった。延長戦に入れば枠は6人に増える。日本はその枠を使い切らずに敗れたことになる。

 フィールドプレーヤーで最後までベンチを温めたのは瀬古歩夢。これまで一度も出場したことがないセンターバックをベンチに残したまま、日本は終了のホイッスルを聞くことになった。瀬古を最終ラインに投入し、板倉を1列高い守備的MFに押し上げる戦術的交代ができなかった点に、森保采配の弱点が見て取れた。

 対するスペインは6人の交代枠すべてを使い切っている。チームとしての疲労感を、可能な限り分かち合いながら戦ったスペインと、それができなかった森保監督。オーバーワークが明らかな選手が、確実に存在したにもかかわらず、手をこまねいたまま敗れ去った。

 森保監督が2022年カタールW杯まで代表チームの指揮を執るなら、あらためてほしい点だ。この選手交代の考え方では、W杯本大会の決勝トーナメントで上位は狙えない。監督の冴えた采配抜きに、日本の好成績は望めないのである。

 延長後半10分、試合を決める一撃を放ったのは、途中交代で入ったマルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)だった。そのひとつ手前で絡んだミケル・オヤルサバル(レアル・ソシエダ)ともども、左利きである。日本なら久保、堂安を想起させる2人組だ。しかし、日本はこの関係に敗れた。久保がレアル・マドリード入りするためには、同じく左利きのアタッカーであるマルコ・アセンシオの上をいく必要がある。この準決勝は、ある意味で久保がマルコ・アセンシオに敗れた日という見方もできる。

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